2014 Fiscal Year Research-status Report
現代アメリカの公職選挙と支持基盤の変容:分極化時代の政党ネットワークの形成過程
Project/Area Number |
26780077
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡辺 将人 北海道大学, 大学院メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (80588814)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | アメリカ / 公職選挙 / 政党 / 民主党 / 共和党 / 分極化 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度においては、第1に、政党衰退論と候補者中心選挙論以降の政党研究の文献研究による整理を行った。政党帰属意識の低下による分割投票の増大などに伴う政党衰退論を、全国政党機関の制度化、州政党組織の強化と制度化、政党の制度的強度を見直す議論等の政党衰退論批判に照らして再検討し、2000年代以降の政党研究理解の土台を確認した。 第2に、中間選挙年であることを考慮し、現地調査をさっそく本格化させた。連邦議員への聞き取り調査の準備を進めるとともに、民主党一党体制が長く継続していたハワイ州の事例調査も行った。ハワイ州では日系の支持基盤が民主党で指導的役割を果たしてきたが、2014年上院選予備選では日系候補がユダヤ系現職候補に敗北した。また、ハワイ民主党史上初めて民主党現職知事が予備選で挑戦者に敗北するなど党内分裂が顕著であったが、連邦議会における当選回数序列要因、フィリピン系の増加等の人口動態変化、環境問題等の争点の台頭によるリベラル派分裂などの背景を浮き彫りにした。 他方、共和党内の各支持基盤の変容にも注目し、ティーパーティ運動の性質が地域別に異なることが、政党の支持者連合の形成に与える影響に焦点を絞って現地調査を行った。中西部アイオワ州ではティーパーティ的な要素が共和党各派に分散的に浸透している現状を把握した。エスタブリッシュメント系、社会保守系、リバタリアンの3派以外にティーパーティが独立した派を形成せず、3つの集団に部分的に溶け込むなど、純粋な財政保守運動だった同運動が、中西部では社会保守の合流で性質を変容させている現象を観察した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハワイ州と中西部アイオワ州での現地調査を土台に、12月にワシントンでも追加の現地調査を行い、中間選挙後のオバマ政権をめぐる総括的な聞き取り調査を行った。2014年中間選挙における民主党の敗北を(1) 共和党各派の結束と2016年大統領選挙の「合流」、(2)争点定義における民主党側の主導権の喪失、(3)中間選挙における戦略と技術をめぐる制約、(4) 中間選挙直前に深刻化した国際問題の内政的含意、(5) 議会の停滞と政権2期目の政策実現の壁などの5つの要因から分析した。その成果は「2014 Midterm Elections and American Politics:中間選挙と国内政治」"Japan-US Partnership and Prospects of Asian Regional Cooperation", Waseda University, Organization for Japan-US Studies等の複数のシンポジウムで報告として発表した上で「2014年中間選挙における民主党敗北の文脈」『立教アメリカン・スタディーズ』37号に論文を公表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2015年は翌年の大統領選挙を目前に予備選挙の前哨戦が各州で本格化するため、政党や候補者の陣営がイデオロギー的分極化、人口動態の変容、新技術の浸透にどのように対応してるかのデータを現地調査で収集すると共に、聞き取り調査による非参与観察の質的調査を継続する。アウトリーチ戦略の実態に関する調査も進めるが、とりわけ共和党と民主党で顕著な差異があるか、党内の穏健派とリベラル派や保守派などに対してどのような統合的アウトリーチを行っているか、それが支持者連合をどのように形成しているかをアイオワ党員集会をはじめとした予備選挙過程における活動家と政党の役割から明らかにする方針である。
|
Causes of Carryover |
会計手続(支払処理期日)により3月に購入した物品の経費の支払が翌月次年度4月となったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の次年度使用額は実際上はすでに購入手続が全て(納品まで)完了しており、4月中に支払まで完了する予定である。
|