2014 Fiscal Year Research-status Report
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26780082
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
境家 史郎 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (70568419)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 政治参加 / 投票参加 / 政治的平等 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度では、まず政治参加格差論に関する国内外の既存研究の検討を行った。とくに研究の蓄積が進んでいるアメリカの最新研究を中心に検討し、日本との格差状況の違いについて、公開セミナーでの研究報告を行った(2014年12月社研セミナー)。この報告では、1990年代以降の日本において、どの種類の選挙においても、学歴と投票率の相関関係が強まっていること、すなわち、日本においてもアメリカのように、今日では教育程度による投票参加バイアスが存在することを明らかにした。また、国際比較調査(ISSP2004)のデータを利用して、日本における投票参加の教育バイアスが、諸外国のなかで中程度の強さであることも示した。 さらに、文献渉猟の過程で、1990年代の参加格差構造変化の説明に関する新しい着想を得た。具体的には、55年体制崩壊以降における主要政党間のイデオロギー差異の縮小が、有権者、とりわけ低教育層の投票参加意欲の低減と関係があるとの仮説を想起した。そこで最近の選挙調査(東京大学谷口研究室・朝日新聞社共同調査)を利用し、この点を検証する実証分析への取り組みを開始した。 教育の投票参加促進効果に関する因果分析については、具体的な分析を行った結果、政治学方法論のテキスト(加藤淳子・境家史郎・山本健太郎編『政治学の方法』有斐閣、2014年、第4章)の一部として、その成果を収めることができた。 有権者の選挙におけるインターネット利用の問題については、明るい選挙推進協会の2014年参院選調査を分析した結果、その利用者自体が依然としてかなり少数であることが分かった。これ自体は意味のある知見であるが、同時に、これ以上の有効な統計的分析を加えることが難しい点が結果として確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画は、まず、国内外の政治参加格差論に関する先行研究を検討することであったが、これは順調に行うことができた。特に、アメリカにおける最近の包括的研究(Schlozman, Verba, and Brady 2012; Leighley and Nagler 2013)を中心に検討し、これにより、新しい研究着想も得ることができた。たとえば、有権者の政党間のイデオロギー差異認識と投票参加の関係を考えることが有効であると考えるに至ったが、これはLeighleyらの研究に負うところが大きい。この分析結果については、平成27年秋に発行される学術誌『レヴァイアサン』で出版されることが予定されており、順調に進展している。 教育の投票参加促進効果に関する因果分析については、具体的な分析を行ったうえで、政治学方法論のテキスト(加藤淳子・境家史郎・山本健太郎編『政治学の方法』有斐閣、2014年、第4章)の一部として、その成果を出版することができた。具体的な成果物の公開までは当年度では予定していなかったことであり、この点は事前の期待以上の結果であると評価できる。 有権者の選挙におけるインターネット利用の問題については、予定通り、明るい選挙推進協会の2014年参院選調査を入手し、そこに含まれる質問項目の分析を行うことができた。ただし、そこで確認されたことは、インターネットの政治的利用者自体が依然としてかなり少数であるということであり、それ以上の学術的に興味深い分析結果を得るには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、ここまで順調に進捗しているため、平成27年度以降もこのまま当初の研究計画の通りに推進していく方針である。 平成27年度では、有権者の政党間イデオロギー差異認識と投票参加の関係に関する分析結果を、秋に発行される学術誌『レヴァイアサン』において出版することに注力する(論文の掲載自体はすでに予定されている)。それに加え、当初の研究計画に従い、投票以外の政治参加行動に関する格差構造についても分析を広げていくことを予定している。 最終年度である平成28年度は、前年度までに得た結果のとりまとめと未発表の研究成果の報告、出版に専念する。日本政治学会や日本選挙学会において、分析結果の報告を行うことを予定している。さらに研究会報告によってフィードバックを得たのち学術論文としてまとめ、『選挙研究』『年報政治学』『レヴァイアサン』等の査読誌に投稿し、刊行することを目指す。
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