2015 Fiscal Year Research-status Report
規範的秩序構想としての憲法パトリオティズム――その論理的構造と政治的可能性――
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26780083
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
馬原 潤二 三重大学, 教育学部, 准教授 (40399051)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 憲法パトリオティズム / 政治理論 / リベラル・デモクラシー / 形式合理性 / アイデンティティ / 規範的秩序 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は主として憲法パトリオティズムの理論的な全体像を再構成するという平成26年度の研究の中間報告及び関連する課題についての論文作成を行った。 まず、本研究の中間報告として招待講演「憲法パトリオティズムの視座」(中国人民大学)および招待講演「憲法改正問題と憲法パトリオティズム」(北京理工大学大学院)を行った。ここでは、現実の政治的コンテクストにおける憲法パトリオティズムの存在意義について分析した。 そのうえ、中国人民大学では、現地の研究者および大学院生を対象とする連続特別講義(第一回「憲法パトリオティズムの登場」、「憲法パトリオティズムの論理」、「憲法パトリオティズムの行方」)を開催し、国際的な視点から意見交換及び議論を行った。ここでは、憲法パトリオティズムの成立過程、論理構成、哲学的背景、今後の検討課題についての分析を明示した。 また、上記の成果を踏まえ、論文「神話」(『政治概念の歴史的展開』第八巻所収)および「環境―-新たなる政治の変数」(『原理から考える政治学』所収)を発表し、憲法パトリオティズムの論理を検討するうえで考慮するべき思想的状況を整理した。具体的には、前者では、政治の領域の「脱魔術化」(合理化)と「再魔術化」(非合理化)の双方の圧力の存在を指摘し、その双方に目配せした憲法パトリオティズムのような形式合理的なロジックの必要性を弁証した。後者では、環境問題への取り組みに必要な思想的枠組みという観点のもと、憲法パトリオティズムにつながる熟議デモクラシーの必要性を説明し、現実の問題状況から憲法パトリオティズム的な言説の存在意義を論じた。 以上の作業は憲法パトリオティズムに内在する論理的課題と現実的な有用性を検討するうえで欠かせない重要な取り組みであり、他の政治理論との関連性を分析する今後の研究課題に取り組む上での基礎となるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度科学研究費事業交付申請書に作成した平成27年度の研究実施計画については、予算の関係で公開の討論会について断念したほかは、ほぼ当初の予定通りに実施している。 平成27年度は当初、本研究の中間報告を日本国内の学会発表によって行うことを計画していたが、中国の中国人民大学と北京理工大学からの招待により海外の研究者を前に報告する機会に恵まれたばかりでなく、本研究をもとにした連続特別講義(中国人民大学)の機会をも得た。また、その成果を踏まえて論文を執筆することによって、今後研究を推進するにあたって課題となる問題状況をより明確にすることができた。 なお、こうした経緯から、当初の予想よりも多くの解決するべき課題を発見するに至ったため、それらをフォローするべく、日本国内の研究機関および図書館をはじめ、ベルリン州立図書館やフンボルト大学附属図書館などでの追加の資料収集を、当初の予定以上に行った。そのため、資料の分析および整理に当初見込んでいた以上の時間を要する事態になっているが、研究の進捗を著しく阻害する状況にまでは至っていない。 また、予算の関係上開催できなくなった討論会のフォローのため、ハーバーマスの政治理論の研究者などとの議論・検討の場を設けるとともに、学会出席を機会に他の研究者とも意識的に意見交換を行った。 以上から、平成27年度までの研究については、おおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は本研究の最終年度にあたり、これまでの成果を踏まえたうえで、憲法パトリオティズムの理論的特徴とその問題点をリベラル・ナショナリズムなど他の政治理論との関係性の中から明示するための論文を作成する作業に入る必要がある。 そのため、平成27年度までに収集した論文資料や主としてドイツで行ってきたインタビューなどの取材資料を子細に分析し、論文執筆に向けて、他の研究者との意見交換の機会を平成27年度以上に設けることにしたい。 ところで、この間、ドイツをはじめヨーロッパでは、中東からの移民問題がクローズアップされており、本研究を推進するうえで無視できない状況が生じつつある。今なお深刻化する一方の移民問題は、ヨーロッパ各国におけるナショナリズム的な意識を高揚させるとともにヨーロッパ統合に対する懐疑心を増幅させつつあるが、このような状況の下では、憲法パトリオティズムに基づく秩序構想がどのように可能なのか、また、そのための理論的かつ現実的な課題が何なのかを改めて再確認する必要がある。そのため、現下の問題についてのヨーロッパの政治理論家の発言や論文をさらにフォローするべく、追加の資料収集や取材の機会を設けるなどして対応することにしたい。
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Causes of Carryover |
年度末に資料書籍の購入を計画していたが、同書籍は絶版となっており、古書などでの購入を検討するも年度末を迎えてしまったため、手続き上年度をまたぐことになり、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の通り、資料書籍を購入するために使用する予定である。
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Research Products
(4 results)