2014 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本のジェンダー秩序とその変容に関する政治社会学的研究
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26780085
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻 由希 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (40610481)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ジェンダー / 自由民主党 / 男女共同参画局 / ナショナル・マシーナリー / 制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、研究実施計画の通り、ナショナル・マシーナリーおよび自由民主党に焦点を当て、55年体制の崩壊以後のジェンダー秩序の変容を明らかにすることを目的として調査研究を実施した。 第一に、ナショナル・マシーナリーすなわち男女平等政策を所管する政府機関の制度的権限の変化と影響力を明らかにするため、内閣府の男女共同参画局の成り立ち、制度的権限の変遷、そして政策過程における役割・影響力について調査分析を行った。分析に先立ち、近年議論が起こっているフェミニスト新制度論についての先行研究をレビューし、ジェンダー政治学者とジェンダーに無関心な新制度論者の間で制度の役割と影響についてどのような合意点と相違点がみられるのかについて考察を行った。また、内閣府男女共同参画局の政策実施の方法について、中央政府と地方政府の間の権限委譲という点からどのような特徴がみられるのかについて考察を行った。以上の考察をまとめ、日本政治学会の年次研究大会において報告を行い、討論者および参加者と意見交換を行った。 第二に、戦後日本で長く政権を担当してきた保守政党である自由民主党(以下、自民党)が女性政策の形成と変化においてどのような役割を果たしてきたのかを、自民党内の競争および与野党間の競争という観点から分析を行った。とくに、第二次安倍内閣において積極的に女性活躍推進政策が推し進められている理由を明らかにするため、野党時代の自民党の党再建の努力の一貫として設立された女性議員をリーダーとする特別委員会の果たした役割に注目し、そこにおけるアイディアの形成過程を追跡した。以上の分析結果を論文としてまとめ、所属機関の発行する紀要に公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定では、関係者へのヒアリング調査を初年度に行うことを予定していたが、研究全体の設計上、資料収集および文献に基づく調査分析を先に行うほうが良いと判断したためにそれを優先し、結果としてヒアリングの実施が遅れた。第二年度は関係者へのヒアリング調査に優先的に取り組むこととする。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度はまず、平成26年度に調査したテーマについて関係する人物のヒアリング調査を行う。内閣府男女共同参画局の官僚、男女共同参画担当大臣、地方公共団体の男女共同参画部署の担当者、自由民主党の女性局メンバー(中央、地方)、党執行部、党職員等にヒアリング調査を行う。以上のヒアリングの内容についてはヒアリング協力者の同意が得られれば文章化・公開を行う。 平成27年度の後半には、新たに、地域住民団体によるコミュニティ・ガバナンスを通じたジェンダー規範の構築とその変化について調査を始める。まず先行研究を渉猟して、地域コミュニティで住民団体(自治会、婦人会やPTA、市民団体、NPO等)が果たしてきた役割を検討する。 平成27年度は、以上の分析を通じて、とくに保守政党および地域コミュニティにおけるジェンダー秩序の形成と変容の過程を、中央および地方の二つのレベルにおいて明らかにすることを目指す。 平成28年度には、前年度の調査分析を継続するとともに、スペイン、オランダといった国々との国際比較によって日本の特徴を浮き彫りにすることを目指す。両国はともに日本と同じく男性稼ぎ主型の福祉レジームの特徴を持っていたが、そこからの急速な転換という特徴がみられる。主に二次文献に基づき、これらの国々の政策転換の要因を抽出し、それらと日本を比べることで日本の今後の方向性を考察する。
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Causes of Carryover |
ヒアリング調査の本格的な実施を当初予定の平成26年度から平成27年度にまわすことにしたため、それにともない旅費も平成27年度に使用することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
関係者へのヒアリング調査のため、前年度の未使用額を含め、国内旅費を多く使用する。また国内外の学会での研究報告、専門家との意見交換のため、国内・海外旅費を使用する。そして文献の収集のために物品費、資料の複写のため複写費を使用する。
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Research Products
(2 results)