2016 Fiscal Year Research-status Report
世論変化のタイミング-動学的モデルの時系列分析と自然実験による検証
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26780086
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
中村 悦大 愛知学院大学, 総合政策学部, 准教授 (10432783)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 政治学 / 投票行動 / 実験室実験 / 18歳選挙権 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は3年目にあたり参議院選挙が存在する年であった。当初計画では政治情報の更新についての調査を連続して予定であったが、選挙権年齢が18歳に下がったため、当初の計画通りには調査を行うことができなくなった。そのため、3つの高校に調査協力を依頼し、2回の調査を連続して行うことで当初計画とはやや異なる形であったが選挙権と情報更新との関係を調査することができた。また、18歳の若者の投票行動の研究として申請者のすむ愛知県のうち3つの市において高校生の政治意識の調査を行った。 このように当初計画とはやや異なる形ながら、政治情報に関連する調査自体は実施した一方で、結果は当初の想定と異なり、政治参加の経験が政治意識に影響を及ぼしておらず、また選挙権もほとんどの面で情報量の増加につながらないという結果を得た。このことから、合理的な有権者の想定は正当化が難しい面があるということが分かった。この調査結果は論文にまとめるべく作業を行っている。 このように当初の仮説とは全く異なる想定の結果が生まれたため、それでは逆に、若い有権者が非合理的に意思決定を行っているかどうかという点に関して、実験室実験による検討を行った。具体的には映像操作により政治家の見た目を変化させて政策や支持態度に変化が出るかどうか、音声変換により候補者の演説の性別を変換して有権者の支持態度が変化するかという検討を行った。これは新しい試みであったが非常に面白いことに情報を十分に与えれば実験室実験では若い有権者は外見や性別などの非合理的要素よりも政策をもとに支持を決めるということが分かった。つまりやはり政治情報量が非常に重要であるという方向の結果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年までに動学的な問題に関してはすでに作業を終えて、今年度はミクロ的な有権者個人の意思決定の分析にあたるところであった。法制度が変化するという不可抗力により当初計画とは異なる形になってしまったが、一方で、調査自体は十分な量を行った。よって研究自体は進展しているが、想定した結果とは異なる状況が生まれている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果から有権者は意図的に情報更新を行っているというよりは世間の情報量に押されて情報更新を行っているという関係が明らかになりつつある。情報と意思決定の関係について、今年度は昨年度の調査結果データをまとめて、論文の投稿を行いながらさらに上述の理解が正しいかどうかを追加的な実験等で確かめていく予定である。
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Causes of Carryover |
調査用に謝礼を多く予定していたが、当初と異なる形の調査を行うことになり、その際に調査対象が大学生から高校生になった。華美な謝礼よりも質素なものを調査協力の高校が希望したため、予定よりも低い金額で調査を行うことができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年の調査結果からさらに追加で調査すべき点が生じたため、使いきれなかった謝礼を来年度の実験謝礼等として活用したい。
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Research Products
(1 results)