2016 Fiscal Year Annual Research Report
Political Responsiveness and Social Responsiveness of the Government in the Age of the Administarative State: The Case Study of the Federal Government of the United States
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26780088
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Research Institution | Kushiro Public University of Economics |
Principal Investigator |
菅原 和行 釧路公立大学, 経済学部, 准教授 (90433119)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 政治任用 / 官僚制 / 公務員 / 行政管理 / バロイング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、近年のアメリカ連邦政府において政治任用による応答性の確保が困難になるなか、政治任用に代わる手段を用いて応答性が確保されている状況を明らかにした。 第一に、バロイング(政治任用者を職業公務員に転換する行為)に注目し、オバマ政権からトランプ政権への移行期における実態を分析した。第二期オバマ政権の後半は、議会における政党分極化を背景として大統領のリーダーシップが大きく制約されていたため、これまでの政策的成果や政治的影響力を保持するうえでも、バロイングは一定の効果を期待されていたと思われる。実際に会計検査院の報告によれば、2010~2015年には69名の政治任用者が職業公務員に転換した。この背景には、政策の継続や影響力の保持を望む前政権の意図のほか、政権交代後も職業公務員として政府に残り続けることを望む政治任用者の意図も想定される。その後のデータはまだ公表されていないが、2016年には政権移行の終盤を迎え、さらに多くのバロイングが行われたことが推測される。 第二に、行政管理によって応答性を確保する試みを明らかにした。オバマ政権においては、クリントン政権から続く成果志向の行政管理が推進された。こうした行政管理は、多くが議会を介さずに行政命令や大統領覚え書きによって行われ、政治任用に代わる応答性確保の手段として用いられた。一方、行政管理による応答性の確保が、実際にどの程度の効果があったかという点はさらなる考察が必要である。行政管理の改革が大統領の影響力や政策的裁量を大幅に拡大するものであったとは考えがたく、政党分極化が深刻化するなか、リーダーシップを発揮するための妥協的な方策として用いられた可能性は否めない。
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