2014 Fiscal Year Research-status Report
フランスにおける公務員の移動と自治体政策パフォーマンスに関する研究
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26780091
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Research Institution | Yamanashi Prefectural University |
Principal Investigator |
玉井 亮子 山梨県立大学, 国際政策学部, 准教授 (10621740)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 公務員制度 / 自治体上級幹部職 / 職員移動 / 政策パフォーマンス / 地方分権化政策 / 国際情報交換 / フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
地方分権化政策の下、フランス地方自治体の職員任用と自治体活動について、公務員の地理的な移動に着目して分析を進めている。本年度は、第一に、地方自治体に軸足を置き、自治体を移動し、その都度、上級幹部職に就き、キャリアを積み上げていく国家公務員と地方公務員の様相を取り上げ、検討した。その際、自治体首長の自由裁量ポストである上級幹部職に就いた経験のある者たちをその考察対象とし、職員移動をめぐる法制度を記述した。そして職員移動の事例を取り上げ、そこから公務員の移動の動機として、キャリア展開、自治体の政治的環境の変化、党派性とコネクション、専門能力とマネジメント能力、という視点を抽出し、公務員たちが自治体を移動してまで新たな職場を探す動機や背景に言及した。また自治体が彼らを任用する動機として、首長の政治的資源の獲得の一手法と捉えられることを示した。第二に、自治体の活動、そして職員の移動にも関係している地方分権化政策について、1980年代以降からオランド政権下の状況を把握することにも努めた。これは自治体政策のパフォーマンスに影響を及ぼすと考えられる点についてその現状を把握するということにつながっている。2000年代に入って地方の大都市化を推進する政策が更に強化されている。そして都市化した自治体政策の形成、実施には職員任用が影響していること、すなわち有能な職員を採用できることが首長の実績となるような政策の形成と実施につながるため、職員を採用する側である首長の意図を更に詳細に明らかにする必要があることを改めて確認した。またオランド政権下で進む州改革の状況と権限の再配分案に関しては、新たな権限同士のつながりを生み出し、自治体政策パフォーマンスに影響を及ぼす可能性があるといった議論を示した。これらの点については研究会発表を行い、現在、論文として公刊する準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は分析枠組みを構築するために、フランス公務員人事システム、地方分権化政策、自治体をめぐる政策決定過程分析に関する先行研究に関する文献・資料を集めた。そしてそれらに基づいて、論文を執筆した。その際、公務員の移動情報を掲載するサイトから情報を収集したが、その情報も含めて、公務員の移動に関するデータベース作成についても進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に引き続き、分析枠組みの構築、データベースの作成・更新を行う。そのため、26年度と同様に、文献やインターネットでの資料収集、現地での資料収集、先に記した研究者に追加の助言を求める、研究会への参加などが必要と考えている。またデータベースの作成と並行して、どのような人材を自治体が必要としているのかについて、分析を始めたい。
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Causes of Carryover |
本年度、研究論文を執筆した結果、上級幹部職の採用に関しては都市部では戦略的に行われている可能性を導き出した。そこでその検証を行う必要性があったため、予定を変更した。そのため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度分として請求した助成金と合わせて、予定していたフランス現地調査を実施したい。その為の事前準備のための資料収集、データ収集に努めたい。
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