2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26780092
|
Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
馬場 香織 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター, 研究員 (10725477)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ラテンアメリカ / 移行期の正義 / 軍事政権 / 記憶 / 人権 |
Outline of Annual Research Achievements |
民主化後のラテンアメリカ諸国では、過去の内戦や軍事独裁、あるいは文民による独裁体制下で起こった超法規的処刑、強制失踪、拷問といった人権侵害とどう向き合うかという問題をめぐって、多くの議論がなされてきた。この問題を「移行期の正義」(transitional justice)と呼ぶ。本年度は、ラテンアメリカ各国の過去の記憶をめぐる取り組みについて理解を深めることを目標に、現地調査とその成果の発信を行った。 現地調査では、2015年7月から8月にかけて、アルゼンチンとメキシコを訪れた。アルゼンチン軍政下では、市民の誘拐を体系的に行う軍の秘密施設(拷問拘留所)が全国に作られた。こうした施設のうち主要ないくつかは、現在、行政と市民団体の協力の下で、「記憶と人権推進・擁護のためのスペース」とされ、一般向けの施設ツアーなどが開催されている。こうした取り組みは、より弾圧の規模や程度が小さかったといわれるメキシコでもみられ、メキシコシティ中心部に近いトラテロルコ広場にある「68年記念館」が、その代表的なものである。本研究では、各国の記憶の試みがどのような条件の下で進み、どのように行われるのかについての考察を進めた。その成果の一部は、アルゼンチン、メキシコにペルーの事例も加え、一般向けのエッセイとして発表した。 そのほか、並行して進めてきた社会保障分野の改革についての論文や、メキシコについての現状分析についての論稿も発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査、調査結果のまとめ、一般向けの情報発信などを行えたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
3年目は最終成果論文の執筆に取り組む。年度後半、補足的現地調査を実施する予定である。
|
Causes of Carryover |
物品購入が少額にとどまったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
関連図書の購入と海外実地調査に使用する予定。
|
Research Products
(6 results)