2017 Fiscal Year Annual Research Report
A New Orientation of Normativity in Contemporary Democratic Theories
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26780093
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山本 圭 立命館大学, 法学部, 准教授 (90720798)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エルネスト・ラクラウ / シャンタル・ムフ / 左派ポピュリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度である本年度は、これまでの成果を踏まえた上で、民主主義とリベラルな規範との結節点として、近年注目される「左派ポピュリズム」の検討を行った。昨今の欧州などにおける極右ポピュリズムの台頭もあり、ポピュリズムは、社会に分断や排除を生み出し、リベラル・デモクラシーを毀損するものとして、政治学者のあいだではあまり評判の良くない概念である。しかし、シャンタル・ムフやヤニス・スタヴラカキスのような論客は、ポピュリズムに現代民主主義を根源化する可能性を見出し、それを一定のリベラルな諸原理と節合することで「左派ポピュリズム」という立場を精力的に展開している。それはマイノリティの排除を唱える極右的なポピュリズムとはちがい、排除された人々やマイノリティの包摂を可能にするポピュリズムのあり方なのである。 本研究は共同体における人々のつながり、つまりは「政治的紐帯」の再生が、しばしば「ネイションの罠」に陥っていることを確認した。しかし、ネイションを中心に人々の連帯を再生しようとする試みには、容易に他者を排除する、排他的で不寛容な紐帯に陥ってしまう危険性が潜んでいる。それを避けるために、ポピュリズムが一定程度、有効であることを示した。つまり、ポピュリズムは人々のつながりを分断するのみならず、非本質主義的な紐帯を創出する大きな手がかりになることがわかった。 本研究成果は、「ポスト・ネイションの紐帯のために」(『つながりの現代思想』明石書店、2018年4月)として、執筆された。
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Research Products
(4 results)