2015 Fiscal Year Research-status Report
熟議デモクラシーの包括的構想の解明――J・ハーバーマスの「法」・政治理論
Project/Area Number |
26780095
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田畑 真一 早稲田大学, 政治経済学術院, 助教 (90634767)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 認知デモクラシー論 / ハーバーマス / 熟議デモクラシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、7月に名古屋で行われた国際シンポジュームにおいて認知デモクラシー(epistemic democracy)論についての報告を行った。認知デモクラシー論とは、「デモクラシーが正しさ(rightness)の次元を扱えるのか」という問いを提起し、その上で扱えなければデモクラシーそれ自体の正統性が担保できないと論じる議論である。近年デモクラシー論において一つの潮流となっており、本研究におけるテーマである熟議デモクラシー論においても大きな論点となっている。本報告では、こうした認知デモクラシー論が提起する問いを真摯に受け止め、熟議デモクラシー論の立場から応答を試みた。こうした試みは、本研究が目指す熟議デモクラシー論の包括的構想の提示という観点からも、熟議デモクラシーが認知的側面を備え、この論点を適切に扱えるということを示すもので、重要な貢献であると考える。 11月には社会思想史学会にて行われたセッション「ポスト基礎づけ主義と規範の行方」のコメンテーターを務めた。ハーバーマスとアーペルとの究極的根拠づけについての論争を踏まえ、正当化という実践がもつ意味について論点を提起した。 12月から1月にかけての海外出張においては主にドイツで資料収集を行い、研究を遂行する上で必要な資料も入手した。また、その滞在において、フランクフルト大学のライナー・フォルスト教授と面談すると共に現地で行われたシンポジューム等にも出席した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、シンポジュームでの報告と共に論文を少なくとも一本投稿することを予定していた。しかし、当初予定なかった海外出張などを行ったため、本年度中に投稿することはできなかった。ただ、この海外出張は来年度行う予定のものを前倒ししたものであり、出張で入手した資料を基に研究を進めていくことで、遅れは取り戻せると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度投稿を予定し、まだ投稿できていない論文を夏までに仕上げ、投稿する。その上で、12月までにもう一本論文を投稿する予定である。 また、その他に2度ほど学会報告を行う予定がある。
|
Causes of Carryover |
研究遂行のた、研究対象であるらいねー・フォアストとアクセル・ホネット両論者について新たに資料収集を行う必要が生じたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
資料収集のために、ドイツのフランクフルト大学に調査旅行に行き、大学図書館等で資料調査を行うと共に、ライナー・フォアスト教授との面談を行った。
|