2016 Fiscal Year Annual Research Report
Japan's Political and Diplomatic History of the northern sea fisheries
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26780107
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
村上 友章 三重大学, 教養教育機構, 特任准教授(教育担当) (80463313)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 北洋漁業 / 缶詰 / 東洋水産 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の本年度は昨年度、実施できなかった資料収集を行い、研究成果を論文にまとめる作業を行った。その結果、まず、「東洋水産株式会社の興亡―鳥羽における高碕達之助」を『三重大学教養教育機構研究紀要』に掲載した。これは本研究が目的とする北洋漁業において極めて重要な役割を果たした缶詰産業の勃興期について新資料をもとに分析した。従来、缶詰産業の歴史的展開については詳細な学術的研究がなかった。本稿によって、北洋漁業勃興を促した露領漁業における缶詰業発展の起源に光を当てることができた。この研究を通じて、このころから日本水産業において農商務省水産局が果たしてきた主導的な役割を水産講習所の伊谷以知二郎教官を中心とする同校ネットワークが引き継いでいったこと、そして、彼らが堤清六らの堤商会を中心とする民間漁業家との間で北洋漁業をめぐり競合関係にあったことが明らかとなった。 以上の最終年度の研究成果によって、「官」の立場に近い水産講習所ネットワークと「民」を代表する日魯漁業の対立と協調の関係がその勃興期から一貫して北洋漁業を形作ってきたことが明らかとなった。一方、農商務省の関与の退潮によって、水産講習所ネットワークは種々の統制をリードせざるをえない立場に立っていく。こうした水産講習所ネットワークの要にあったのが伊谷の信頼厚い東洋製罐の高碕達之助であった。本研究では、主としてその高碕の個人資料を用いることで、期間全体を通じて北洋漁業の政治外交史の実相を立体的に考察することができた。
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