2017 Fiscal Year Research-status Report
労働サーチ理論を用いたライフサイクル上の雇用・失業分析
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26780114
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
藤本 淳一 政策研究大学院大学, 政策研究科, 准教授 (00507907)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マクロ経済学 / 労働サーチ理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主目的は、労働者の年齢を明示的に扱うライフサイクル・労働サーチ・マッチング・モデルを用いたライフサイクル上の雇用・失業問題の分析である。前年度に引き続き、本年度も主に以下の3プロジェクトを探求した。Fujimoto and Lee (2016)では、ライフサイクル・労働サーチ・マッチング・モデルに長期労働契約を導入し、最適賃金経路の理論的分析を行っている。具体的には社会厚生が全労働者の厚生の和に等しいベンサム型と、最も恵まれない労働者の厚生に等しいロールズ型の社会厚生関数の下での最適賃金経路を比較考察した。Fujimoto et al. (2017) では、ニューケインジアンモデルに、労働サーチ・マッチング・モデルを応用してモデル化した金融市場を導入した上で、各種政策による厚生分析を行った。2017年度には両論文を国際学会で積極的に発表した。Julen Esteban-Pretel氏(ニューヨーク市立大学クイーンズカレッジ准教授)との非正規労働者の研究では、日本の労働力調査及びスペインの類似調査のミクロデータの提供を受け、データの分析を進めた。
(参考文献) Fujimoto, J. and J. Lee (2016): “Efficient Risk Sharing under Limited Commitment and Search Friction,” GRIPS Discussion Paper 16-15. Fujimoto J., K. Munakata, K. Nakamura, and Y. Teranishi (2017): “Optimal Policy Analysis in a New Keynesian Economy with Credit Market Search,” GRIPS Discussion Paper 16-30.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではライフサイクル・労働サーチ・マッチング・モデルを用いた自他の研究を踏まえてモデルの理論的特性の一層の探求を行うと共に、より現実に近いモデルを構築することを目指している。
国際学会等での発表や、他の研究者との意見交換を通じ、標準的なライフサイクル・労働サーチ・マッチング・モデルの理論面についての理解を深めることができた。現在は、日本とスペインの労働市場のデータ分析を行った上で、モデルに正規・非正規雇用の別をデータと整合的な形で導入することに主に取り組んでいる。ミクロデータの入手と、データを分析可能な形式に加工する作業に予定より時間がかかったが、全体としてはおおむね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要で述べたFujimoto and Lee (2016)は基本的に完成しており、適切な国際学術雑誌への掲載を目指している。Fujimoto et al.(2017)は学会発表での指摘を基に論文を大幅改訂中であり、改訂版を今夏の国際学会等で発表の上、早期完成を目指す。 非正規労働者に関するEsteban-Pretel氏とのプロジェクトについては日本及びスペインのデータの精査等を続けると共に、正規雇用・非正規雇用の別を導入した労働サーチ・マッチング・モデルを構築して分析を行い、平成30年度中に論文にまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
日本とスペインの非正規雇用に関する研究につき、データの入手時期が遅れたこと、共同研究者のEsteban-Pretel氏が家庭事情により予定した訪日が延期になったことのため、研究遂行に当初の予定以上に時間を要した。また、上述のとおりFujimoto et al.(2017)において、学会発表での指摘を基に論文を大幅改訂することになった。こうした事情により補助事業期間を一年延長したため、次年度使用額が生じた。
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