2014 Fiscal Year Research-status Report
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26780123
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
松岡 多利思 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 准教授 (70632850)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 銀行危機 / 金融自由化 / 資産市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、以下の3つの研究を軸に研究活動を行った。1つ目は、関西大学の中元康裕准教授と共同で論文Matsuoka and Nakamoto(Incomplete Deposit Contracts, Banking Crises, and Monetary Policy, Kyushu Sangyo University, Discussion Paper, No68, July 2014)を執筆し、ワーキングペーパーとして公表した。本研究では、銀行が不完全な預金契約しか預金者に提供できない際に、いかなるインフレ率の下で銀行危機が発生するのかを分析した理論研究である。申請者は本研究を2つの国際コンファレンスPET2014とSWET2014にて口頭で研究発表を行った。2つ目は、関西学院大学の國枝卓真准教授、京都大学の柴田章久教授と共にバブルと技術選択に関する研究Kunieda, Matsuoka and Shibata(Asset Bubbles, Technology Choice, and Financial Crises, City University of Hong Kong, Department of Economics and Finance, Working Paper: 2013039, May 2013)を改訂し、国際査読付雑誌に投稿した。3つ目は、申請者の単独研究であり、申請課題研究でもある新興国の金融危機に関する理論研究を行った。本年度は新興国における金融危機に関する論文をサーベイし、Chang and Velasco(Quarterly Journal of Economics 116,489-517,2001)に資産市場を組込んだ理論モデルの構築を行った。研究途上ではあるが、暫定的な結果を2015年日本経済学会春季大会(新潟大学)にて口頭で研究報告を行う予定である。そこでのコメントを生かし、平成27年度中に論文としてまとめワーキングペーパーとして公開する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由は、申請課題研究でもある新興国の金融危機に関する理論の構築が概ね終了したからである。平成26年度はChang and Velasco(2001)に資産市場を組込んだ理論モデルの構築を行い、資本の急激な流入が資産価格や銀行危機の規模に与える影響を機論的に分析した。その結果、1997年に生じた東アジア金融危機の特徴と整合的な理論結果を得た。資本の急激な流入が資産価格を押し上げ、その崩壊に伴い銀行危機の規模を拡大させるのである。これら結果はChang and Velasco(2001)の結果を補強または修正するものであり、国際査読付雑誌に掲載され得るものであると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も上記の3つの研究を軸に研究活動を行う。具体的には、2つの共同研究Matsuoka and Nakamoto(2014), Kunieda, Matsuoka and Shibata(2013)については、国際コンファレンスにおいて研究報告を行いつつ改訂を進め、国際査読付雑誌への掲載を目指す。単独の新興国の金融危機に関する研究については、論文のサーベイを引き続き行いつつ理論の精緻化を行う。さらに、理論モデルにおいて実際に遂行された幾つかの銀行危機政策(流動性保有規制、預金保険制度、資本課税等)を数値シミュレーションを用いて評価する。本研究は、理論の革新と同時に現実的な銀行政策の評価方法を提供することが目的であるからである。平成27年度より、暫定的な研究結果を国際コンファレンスや研究セミナーで報告しつつ論文にまとめる。そして論文をワーキングペーパーとして公開し、改訂作業を行いつつ国際査読付雑誌への掲載を目指す。
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Causes of Carryover |
次年度に使用額が生じた理由は主に2つである。1つ目は、当初予定していた数値計算ソフトの購入を控えたからである。上記2つの共同研究については数値シミュレーションは行っておらず、必要となる3つ目の単独研究についても、理論の構築のみに専念したため数値計算ソフトの必要性がなかったからである。2つ目は、学内業務の影響により、当初予定していた国際コンファレンスの参加を見送ったからである。以上2つの理由で使用額に差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度は、3つ目の単独研究については基本的な理論構築に専念したため数値シミュレーションが実施出来なかった。今後は政策分析の作業に入るため数値計算ソフトが必要となる。具体的には、流動性保有規制、預金保険制度、資本課税等の様に、現実に実施された銀行危機政策を理論モデル上で数値シミュレーションを行い評価する。また昨年参加出来なかった国際コンファレンスへの参加を平成27年度は予定している。次年度に繰り越した使用額は、これらの研究活動により消化できると考えている。
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