2015 Fiscal Year Research-status Report
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26780123
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
松岡 多利思 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 准教授 (70632850)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 銀行危機 / 資産価格 / 金融伝播 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は2つの研究①、②を論文としてまとめ、ワーキングペーパーとして公刊した。 1つ目の研究は、①Matsuoka, Tarishi, Banks and Liquidity Crises in Emerging Market Economies (June 29, 2015)である。本研究はChang and Velasco(Quarterly Journal of Economics 116,489-517,2001)の銀行取付モデルに資産市場を組み込んだ理論モデルであり、新興国における資本流入と銀行危機との関係性を理論的に分析した。資本の急激な流入が資産価格の変動を大きくし、銀行危機の規模が大きくなることが示された。 2つ目の研究は、②Matsuoka, Tarishi, Financial Contagion in a Two-Country Model (March 5, 2016)である。本研究は、上記の1つ目研究①を2ヵ国開放経済に拡張させ、金融危機が資産市場の暴落を通じて伝播するメカニズム解明した理論研究である。ある条件の下では均衡下において、ポートフォリオが異なる3種類の銀行が内生的に出現し、その中の非流動的な銀行は、別の国の流動性ショックによって破綻することが示された。これは金融自由化によって各国の銀行システムが脆弱化する可能性があることを意味している。 来年度は、この2つの研究を国内外の学会で報告し、改訂を行いながら国際査読付雑誌に掲載されるよう努力する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2年目において1つ目の研究①を論文としてまとめ公刊できたことは、申請段階において設定した目標が達成出来たことを意味している。さらにその拡張が2つ目の研究②としてまとめることが出来たことは申請時の目標を上回っていることを意味しており、当初の計画以上であると考えられる。今後はこの2つの研究が国際査読付雑誌に掲載されるよう努める。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は2つの研究①、②を国内外の学会で報告し、改訂を行いながら国際査読付雑誌に掲載されるよう努力する。さらに研究②においては、海外投資家の設定を導入するなどし、銀行が自己資本を保有する様な拡張を行う。これによりバーゼル規制に見られるような、国際的な自己資本比率規制の分析が可能になると思われる。
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Causes of Carryover |
学内の業務により、昨年度は国内出張を1件、本年度は海外出張を1件、国内出張を1件を取り止めたため差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、当初計画していた国際学会報告の他に、国際学会報告を1件予定している。またアムステルダムのティンバーゲン研究所に滞在し、研究打合せを行い上記の差額分を使用する予定である。
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