2016 Fiscal Year Research-status Report
名目金利の非負制約を考慮した動学的一般均衡モデルのマクロ実証分析への応用
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26780124
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
廣瀬 康生 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 准教授 (50583663)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 金融政策 / マクロ経済学 / DSGEモデル / ゼロ金利 / 自然利子率 / ベイズ推定 / 非線形モデル / particle filter |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度中は、まず、名目金利の非負制約を考慮したうえで、正の目標インフレ率周辺での均衡とデフレ均衡の間を時間の経過とともにスイッチする可能性を考慮した動学的一般均衡モデルの解法について検討を行った。その結果、このようなモデルの均衡経路を見つけることは非常に難しく、たとえ見つかったとしても、現実的な経済の動きを再現することは難しいことが判明したため、実証分析への応用は見送ることにした。 次に、名目金利の非負制約を含む非線形ニュー・ケインジアン・モデルを用いて、自然利子率の推定を行った。分析の結果、非線形性を考慮して推定した自然利子率は、名目金利の非負制約を考慮しない線形モデルによる推定値よりも高めに推定されることが分かった。分析結果は、論文「The Natural Rate of Interest in a Nonlinear DSGE Model」(砂川武貴氏との共著)にとりまとめ、現在、ワーキング・ペーパーとして公表するために改訂中である。 さらに、非線形動学的一般均衡モデルの推定に有用な逐次モンテカルロ(Sequential Monte Carlo)法を習得した。同手法を用いて、トレンド・インフレを考慮したニュー・ケインジアン・モデルの推定を行い、1980年代半ば以降の米国経済の安定化の原因を分析した。分析結果は、論文「Monetary Policy and Macroeconomic Stability Revisited」(黒住卓司氏、Willem Van Zandweghe氏との共著)にとりまとめ、カンザス・シティ連邦準備銀行のワーキング・ペーパーとして公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、名目金利の非負制約を考慮した非線形モデルの解法と非線形モデルの推定に必要となるparticle filterおよび逐次モンテカルロ法を習得した。これらの手法を用いて論文をすでに3本書いていることも合わせて、おおむね順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に行った非線形モデルを用いた自然利子率の推定には、線形モデルを用いてパラメータを推定したうえで、推定されたパラメータを所与として非線形モデルを解き、particle filterを用いて自然利子率を抽出するというアプローチを採用した。今後は、particle filterおよび逐次モンテカルロ法を非線形モデルの解に直接適用することによって、名目金利の非負制約を含むモデルの非線形性を考慮したまま、パラメータを推定することを試みる予定である。 非線形モデルのパラメータ推定は、計算負荷が極めて大きい作業となるため、マルチ・プロセッサのワークステーションやコンピュータ・クラスター(複数台のコンピュータが相互接続された構成)を導入し、並列計算を行うことも検討する。
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Causes of Carryover |
28年度中にハイスペックなPCまたはワークステーションを導入することを計画していたが、それを見送ったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、非線形モデルの推定という極めて計算負荷の高い作業が必要となるため、ハイスペックなPCまたはワークステーションを導入予定である。また、国際コンファレンスで研究成果の発表を行うための旅費に加えて、論文の英文校閲や学術雑誌への投稿にかかる費用にも使用する予定。
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