2014 Fiscal Year Research-status Report
アダム・スミス以後の経済学と倫理――エディンバラを中心に――
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26780130
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
荒井 智行 中央大学, 経済学部, 助教 (70634103)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アダム・スミス / デュガルド・スチュアート / マルサス / 人口論 / 理論的推測的歴史 / 過剰人口 / 中国 / 文明対野蛮 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度では,アダム・スミス以後の経済学がいかに変容・展開されたのかについて,デュガルド・スチュアートの人口論に焦点を当てて考察した.スチュアートの中国の過剰人口論に焦点を当てながら,彼の人口論における文明対野蛮観を示しつつ,彼の描く文明社会の構想を明らかにすることを目的とした.これは,19世紀初頭のブリテンにおいて,18世紀の間,長く争われた貧国や野蛮との関わりで論じられた文明社会のあり方が再び問われることになった意義を示す試みでもある. 本研究では,スチュアートの『経済学講義』だけでなく,彼の講義を聴講した学生よって記された「学生ノート」の「人口」の項についても考察した.この「学生ノート」は,エディンバラ大学図書館に所蔵されている手書きのマニュスクリプトである.この「学生ノート」を正確にトランスクリプトしながら,『講義』の「人口」の欠落部分を補足しながら,スチュアートの人口論についての論文化に努めた. その成果は,(1)Dugald Stewart on Education: The Perspective of Political Economy in the Early Nineteenth Century Scotland’, History of Economic Thought Society of Australia (at Auckland university, New Zealand)(2014年7月),(2)「デュガルド・スチュアートの人口思想――スミスの中国論との比較を中心に」日本イギリス哲学会関東部会,(於慶應義塾大学)(2014年7月),(3)「デュガルド・スチュアートの経済学研究とその意義」,『経済学論纂』(中央大学)第55巻,第2号 (pp.75-99)(2014年11月)(査読有り),(4)某査読誌への論文投稿にまとめられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年度の研究成果として,国際学会報告1回( History of Economic Thought Society of Australia),関東部会報告1回(日本イギリス哲学会),研究会報告1回(マルサス書簡研究会),論文1本発行(『経済学論纂』(中央大学))のほか,これらの報告や論文発表の成果を基にして,年度内に某査読誌への論文投稿を行っている.これらの研究成果は,本研究の達成度として十分なものといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策において注意すべき点は,私が研究分担者を務める科研費基盤研究(C)の研究と本研究とを上手く両立させながら,本研究を進めていく必要があるということである.特に同研究(C)においては,資料分析が途中段階にあると同時に,10月以降は論文作成のための準備作業も本格化する. この点を考慮に入れながら,本研究では比較的早い段階で資料分析を終え,論文完成を目指したい.2015年では,5月に経済学史学会(於滋賀大学)で大会報告を行い(エントリー済み),その後で,複数の研究会で報告を行う予定である. これらの学会,研究会での報告を基にして,本研究をいっそう進めていく必要がある.
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Causes of Carryover |
当該年度(2015年度)において,本研究に必要な文献が多くなったことがあげられる.文明社会論(文明対野蛮),貧困と教育,道徳哲学に関わる書籍や,アダム・スミスやデュガルド・スチュアートに限らず,マルサスとリカードウやJ.S.ミルに至る多くの経済思想史に関する多くの文献の購入が必要である.また,国内外において,本研究に関わる貴重図書の資料調査のため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究において必要とされる文献については,2015年8月前に多く揃えておく必要がある.また,本研究に関わる内外の文献の調査については,2015年8月から9月の間で計画している.文献の調査においては,本研究を円滑に進めていくために計画的に行う.マイクロフィルム化やPDFでのデータ化など,資料の収集方法についても,作業の効率面から計画的に行う.
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Research Products
(5 results)