2017 Fiscal Year Research-status Report
アダム・スミス以後の経済学と倫理――エディンバラを中心に――
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26780130
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Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
荒井 智行 東京福祉大学, 国際交流センター, 特任講師 (70634103)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | D.スチュアート / 貧民救済・貧困対策 / 公共の穀物倉庫 / アダム・スミス / 『国富論』・『道徳感情論』 / フランス啓蒙思想 / コンドルセ / 道徳哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度の研究目的は以下の2点である.1.アダム・スミス以後の19世紀初頭のブリテンにおいて,経済学との関わりで,この時代を代表とするデュガルド・スチュアートの貧困政策を明らかにすること.2.スチュアートの道徳哲学におけるフランス啓蒙思想からの影響関係についての考察である. 上記1.については,2016年の社会思想史学会大会(於中央大学)にて,拙著の合評会のセッションから得られた知見を基にして,スチュアートの『政治経済学講義』の第2編「国富について」のいっそうの検討に努めた.同『講義』の解釈も含めて,彼の貧民救済論のさらなる分析により,緊急時において国民に食糧を提供するための穀物倉庫についての彼の見解について詳細に考察した. 上記2.については,スチュアートの道徳哲学に関する全著作物において,フランス啓蒙思想からの影響関係について精査するとともに,スチュアートとコンドルセの道徳哲学を比較・検討した.具体的には,コンドルセの『人間精神進歩史』における「完成可能性」という政治哲学がスチュアートの思想にいかなる影響を与えているのかについてである. これら2点の研究とも,文献の解読に多大な時間がかかったことも含め,論文作成の工程にあるため,学会報告や論文発表を行うことは控えざるをえなかった.しかし,【現在までの進捗状況】の中で記す通り,これらの研究成果を出す一歩前の段階にあるため,決して悲観すべき状況ではない. また,研究実績の途中成果として,スミス以後のイングランドの経済学の制度化のあり方をめぐって,2017年6月の経済学史学会大会(於徳島文理大学)において,学会報告「東インド・カレッジにおけるマルサスの経済学講義 1806-1834」を行ったことは,本研究にも関わる点で,ここに触れておきたい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究実績の概要】で記した1.(貧困時の貧民救済が,経済学との関わりでいかに論じられていたのかに関係する研究)と2.(スミス以後の経済学において,フランス啓蒙思想からの影響関係に関わる研究)について,現在までの進捗状況を記したい.【研究実績の概要】の中でも記したように,本年度は,1.と2.のそれぞれにおいて,とりわけ文献研究に努めた.その研究状況として,従来の先行研究の解釈・見解とは異なる独自の視点を示すことができるように至っているということがあげられる. そのため,2017年度内において,いずれかの学術誌に論文を投稿することができなかったが,文献研究において新しい見解・知見が得られている点で,本研究において概ね順調に進行していると肯定的に評価したいと考えている.また,2017年度は,勤務校の退職年度であると同時に,勤務校での教育・校務の負担の重さを考慮に入れても,本研究を進展させていることに成功している点で,研究の進捗状況として評価すべきものと考える. もちろん,本年度は,本研究の最終年度でもあったため,本年度中に,海外の学術誌等への論文投稿に至らなかったということは反省すべきものとして,これを真摯に受け止めなければならない.だが,2016年の社会思想史学会大会(於中央大学)での拙著の合評会のセッションから得られた知見は,本研究の枠組みの多少の修正を迫るものであり,当初予定していた研究の変更も必要とされたことから,研究の遅れであると判断していない. 以上の文献研究の達成については,2018年度に学会報告や学術誌への論文投稿という形で成果を示さなければならないものと考える.この点は,【今後の研究の推進方策】の中で記すことにしたい.
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの進捗状況】の中で記したように,本研究の計画の変更点や修正点は,2017年度内に解決できていることから,今後は,以下で述べるように,研究報告を通じて,論文投稿を行うことに集中したい. 今後の研究においては,研究会や学会大会の報告から,参加者の研究者から頂く多くの御意見を参考にして,論文化にいっそう励み海外の学術誌への論文投稿を目指す予定である. 上記1.については,その研究の途中成果が示されると判断した場合には,2018年度中に研究会での報告を予定している.科研費の基盤研究(C)「大学史のなかのイギリス経済学――東インド・カレッジからオックスフォード大学へ」の共同研究者である安川隆司教授,只腰親和教授,益永淳准教授とは,2018年度内の研究会で会合する機会があるため,その時に本研究の成果について発表することができる.また,本研究の成果を示すうえで,経済学史学会の西南部会での研究会にて報告することも可能である.現在,これらの研究発表を行う環境が整っていることから,各研究会での研究発表を通じて,本研究課題をさらに推進できるように努めたい.なお,上記1.については,もし当初の予定以上に研究が進んだ場合には,2018年度内に学術誌への論文を投稿する. 上記2.については,2018年6月30日・7月1日に開催されるマルサス学会大会(於尾道市立大学)にて,学会報告を予定している(エントリー受理済み).2018年の年内に,『マルサス学会年報』への論文投稿を目指す.
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Causes of Carryover |
本研究の次年度使用額が生じた理由として,2016年の社会思想史学会大会(於中央大学)にて,拙著の合評会のセッションから得られた知見から,研究の枠組みの修正と研究計画の変更を余儀なくされたことがあげられる.そのため,本年度の本研究において,文献の解読に多大な時間がかかったことも含め,論文作成を進めていくなかで,資料収集の文献調査,学会報告や論文発表を控えざるをえなかった.また,本年度は,勤務校の退職年度であると同時に,勤務校での教育・校務の負担の重さから,それらの研究成果を示すことが困難であった. だが,上述の拙著の合評会のセッションから得られた知見は,本研究の枠組みの多少の修正を迫るものであり,当初予定していた研究の変更も必要とされたことから,次年度の研究計画が明確になったことも事実である.現在,本研究の研究成果を示す一歩前の段階の状況にある. 今後の使用計画として,9月25日から開催されるHistory of Economic Thought Society of Australia Conference での国際学会報告ならびに資料調査に充てる予定である.また,本研究の成果を示すうえで,マルサス学会大会(エントリー受理済み)での学会報告ならびに各研究会での研究報告のために,その使用を考えている.
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Research Products
(1 results)