2014 Fiscal Year Research-status Report
アナリティカル・アプローチによる欲望思想の新角度からの研究―経済学基礎仮定の解明
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26780132
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野原 慎司 東京大学, 経済学研究科(研究院), 講師 (30725685)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 欲望思想の社会的基礎 / 経済学の基礎の解明 / 旅行記に見られる経済社会 / 国際研究者交流 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、欲望思想の基礎概念の把握に努めるための研究を行った。研究成果としては、平成26年度5月29日から31日に開催されたヨーロッパ経済思想史学会The European Society for the history of Economic Thoughtのスイス・ローザンヌ大学における大会にて、「スミスとコンドルセにおける自由不平等Liberty and inequality in Smith and Condorcet」との題名にて、経済学上の人間動機の中心にある欲望肯定の社会的背景について報告をおこなった。すなわち、初期近代は世界各国にヨーロッパ人が旅行に行った時代であり、旅行記が多く執筆された。そのなかでもアメリカ・インディアンの社会は、未開だが平等な社会の典型として肯定的に描かれた。旅行記文献の作者にとり、未開社会の貧しさは、欲望の僅少さとして肯定的に描かれたのである。スミスやコンドルセは、文明社会の豊かさを称揚したが、その際、文明社会と対比して、平等かもしれないが貧困にあえぐものとして未開社会を描いた。対比して、不平等かもしれないが豊かな文明社会を肯定したのである。すなわち、旅行記文献に見られる未開社会を、旅行記文献の作者とは異なる価値観から捉え直し、欲望を原動力とする文明社会を肯定したのである。 その他、平成26年度9月には、国際18世紀学会ISECSのイギリス・マンチェスター大学におけるセミナーにて「アダム・スミスの思考を追うTracing Adam Smith's thinking」との題で、スミスの思考における欲望思想の展開を追った。その他、平成27年度に刊行予定の国際学術図書において、「アダム・スミス図書からIn the Library of Adam Smith」との題の論文を掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、年二回国際学会での報告を通じて(平成26年度5月のヨーロッパ経済思想史学会The European Society for the history of Economic Thoughtのスイス・ローザンヌ大学における大会および9月の国際18世紀学会ISECSのイギリス・マンチェスター大学における大会)、計画書に記した国際的水準での研究の遂行を行うことができた。参加を通じて、各国の研究者から質問・助言などをいただき、研究水準の向上のきっかけとなった他、各国の第一線の研究者と知己を得ることもできた。 加えて、平成27年度刊行予定の国際学術図書への論文の掲載も決定しており、着実に成果をあげているものと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、スミスを中心にして、経済学の形成者における欲望思想の研究を行う。具体的には、平成27年度6月のアメリカ・経済学史学会History of Economics Societyにて経済学の形成と欲望との関連についての報告を行う。また、7月の国際18世紀学会ISECSの大会にて、スミスにおける貨幣と欲望の報告を行う。また、北海道小樽にて、ヨーロッパ経済思想史学会The European Society for the history of economic thoughtと日本の経済学史学会の合同国際会議にて、スミスにおける商業の概念と欲望について報告を行う予定である。 なおかつ、これらの研究成果を論文にして国際雑誌に積極的に投稿していきたいと考えている。 これらを通じて、欲望思想にかんする研究を着実に進めるととも、その研究が国際的水準で行われることを担保するつもりである。
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Causes of Carryover |
旅費の精算や図書費の購入において、必要額が当初よりも下回ったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、三度の国際学会の出席を行うほか、国内での研究成果の普及のための研究会への参加を図ることから、次年度使用額は着実に使用されるものと考える。
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Research Products
(3 results)