2014 Fiscal Year Research-status Report
『中国の産業高度化政策の実証分析―中央政府・地方政府・戦略産業に注目して』
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26780140
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 亜聖 東京大学, 社会科学研究所, 講師 (60636885)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中国 / 産業政策 / イノベーション |
Outline of Annual Research Achievements |
3年計画の1年目として、本年度は基礎資料の収集と整理、一部データの分析と研究論文の執筆を行った。まず本研究の目的である、中国における産業高度化政策に関わる中央政府と地方政府の刊行資料を収集した。中央政府については工業情報化部や国務院関連研究所刊行資料を、地方政府の施策については特定の省と市が近年取りまとめた報告書を収集した。例えば、高度化政策の先駆的地域である、広東省では、土地あたりの納税額の多い産業への優遇政策を採用することで、限られた土地資源からの税収を高めようとする取り組みが見られたほか、地域の企業の機械化や製品品質検査を担うイノベーションサービスセンターの設置が見られている。また、一部の企業データについては、分析を行った。具体的には、中国の研究者と協力し、四川省のデータを用い、中央政府と地方政府が実施しているイノベーション政策が、企業の特許出願数や工程改善数に与える影響を傾向スコアマッチング法を用いて分析した。この分析結果については、The Chinese Economists Societyなど、すでに年度内に国外の学会にて研究報告を行い、論文としてまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、中国の中央政府と地方政府の両方に注目し、目下実施されている産業関連政策の概要を整理することと、その評価を行うことを目指している。第一年度に基礎資料の収集と一部データの分析が行えた。基礎資料については、中央政府刊行資料と地方政府の刊行資料を収集し、初歩的な整理を行った。またデータ分析については、内陸地域のデータを用いて、イノベーション政策の効果を実証的に推計することができた。この意味で、計画に照らして、おおむね順調に進展している。ただし、より多様な地域や政策に関する評価についてはまだ分析をおこなえておらず、これらは第二年度以降の課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
第二年度には、特に産業高度化政策の先進地域である、広東省の政策概要の整理と、具体的産業政策(産業集積政策を当面は焦点にすえる予定である)の定量的評価を行うことが目標である。この作業を通じて、第一年度の成果と併せて、イノベーション政策、産業集積政策が、中国の多様な地域でどのように形成され、またどのような効果を持っているのかを示すことができる。また内陸地域との比較という観点からも第二年度の実証研究を行うことで、本研究課題全体にとっても、多くの論点を分析可能となる。なお、より最新の情報を収集するというからも、第三年度の総括的な政策分析に向けて、関連資料とデータ収集にも努める。
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Causes of Carryover |
3月に予定していた現地調査が、現地研究者の都合で実現が難しく、次年度夏への実施へと移行したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の夏季と冬季に現地調査を実施する事で使用することを計画している。
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Research Products
(4 results)