2015 Fiscal Year Research-status Report
『中国の産業高度化政策の実証分析―中央政府・地方政府・戦略産業に注目して』
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26780140
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 亜聖 東京大学, 社会科学研究所, 講師 (60636885)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中国 / 製造業 / 高度化 / 「中国製造2025」 / 「一帯一路」 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年計画の2年目として、本年度は前年度執筆論文の投稿と、新規分析を行った。第一に、中国のイノベーション政策の評価については、執筆論文を国外学術誌に投稿したものはリジェクトされたため、再度修正を行っている最中である。第二に、研究のタイトルにも含まれている地方政府の政策評価については、国内先進地域の広東省における政策動向については、論文として刊行された。そこでは、リーマンショック以降の時期に、広東省で胎動した産業高度化政策を工業データと貿易データから評価し、一部産業の高度化のみならず、低付加価値産業の成長をも内包した変化が生じていたことが判明し、産業の「高度化」が順調に進んでいるとは評価できないと結論付けた。また第三に、中央政府の政策としては、中国政府の高度化政策として2015年に新たに打ち出された「中国製造2025」計画の解読と整理、そして国外への中国企業の投資を促進するシルクロード計画(一帯一路計画)についても検討を加えた。中国製造業に関わる政策として、「中国製造2025」はまさに高度化を推進する計画である一方で、「一帯一路」政策は周辺国、とくにインドネシアやカザフスタンなどで中国企業の活動を活発化させることを期したものである。これらの分析結果については、研究成果として論文にまとめたほか、外部の財団法人で開催された講演会(開催場所:霞ヶ関)においてもその成果を80名あまりの聴衆に伝えた。このほかに、「一帯一路」については、小規模ながらも研究会を開催し、多くの研究者の参集を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
雑誌投稿論文の一部は掲載が決定していないが、広東省の分析については論文が刊行されており、また、新規テーマとして中央政府の政策(「中国製造2025」と「一帯一路」)に関する資料を収集し、分析を開始し、初歩的成果を論文および招待講演会にて報告している。こうした状況を鑑みて、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目は最終年度であるため、これまでに実施した個別研究論文を完成させることに力点を置くが、これに加えて、これまでの研究成果をより集約した形での成果の刊行を検討している。とくに、地方政府の政策評価として、第一年度に実施した四川省の事例に加えて、第二年度には広東省の成果が加わった。また、中国の中央政府の政策動向としては「中国製造2025」と「一帯一路」の資料整理を行っている。こうした作業を総括し、中央政府と地方政府、そして企業・実態の3者の動きをまとめる成果を検討している。
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Causes of Carryover |
第二年度の支出計画に照らして、2%弱を使用しなかったが、これは当初予定していたよりも資料の購入量が少なかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度には研究の総括に向けて関連資料の購入を行う予定であり、図書費としての支出を検討している。
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Research Products
(6 results)