2014 Fiscal Year Research-status Report
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26780141
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
池田 真介 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (90598567)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自殺 / 職種別リスク / 地域研究 / 貯蓄 |
Outline of Annual Research Achievements |
適宜研究助手を雇用するなどして、1980年度から2010年度までの期間における人口動態職業・産業別統計の保管表から、男女別・各職種別の自殺者数、総死亡数、および自殺率と関係が深いとされている離婚率を抽出した。公衆衛生・社会施策の分野で広く認識されている1997年度から1998年度にかけての自殺率の急上昇は、当該データでは1995年度と2000年度における自殺者数の違いに反映されているはずである。興味深いことに、有職者については、国勢調査の職業大分類のうち、「専門的・技術的職業従事者」においてのみ顕著な自殺者数の増加がみられた。また、この傾向は男女に共通して認められた。一般的に自殺行動には男女間で明確な差がみられるが、同傾向が性差を問わず観察される事実は、「専門的・技術的職業従事者」には、他と比べて明確に自殺リスクが高い職業が含まれていることを示した。 また、本研究期間には、平成24年度-平成25年度に科学研究費補助事業で先験的に行った自殺のオプション価値の理論・数値的解析および自殺率の地域別データ(2次医療圏、市区町村)の解析(課題番号24730203)をさらに発展させることも意図されていた。この計画に従い、平成26年度は、自殺のオプション理論の論文をさらに磨き上げ、3つの国際学会(Econometric Society Australasian Meeting, World Finance Conference, Indonesian Financial Management Association Meeting)で発表した。また、統計数理研究所の第5回自殺リスクに関する研究会における発表では、市区町村別の自殺率データと全国消費実態調査および国勢調査からとられた市区町村別の社会経済変数とを組み合わせ、また自殺率データの系列相関や地域固定効果を制御する動学パネルモデルを用いることで、貯蓄水準が自殺率を抑える要因として統計的に有意であることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
都道府県レベルの、自殺を含む男女別・職種別死亡・離婚データの構築はおおむね達成された。また市区町村レベルの自殺率の社会経済変数による回帰分析でもある程度納得いく結果を得ることができた。さらに、自殺のオプション価値に関する理論分析の論文は、国際学会で著名な学者から大変有益なコメントを戴くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
自殺の地域別データの実証研究は論文執筆中であり、近い将来医療経済系の学術雑誌に投稿可能となるであろう。職種別自殺リスクに関しては、統計数理研究所のプロジェクトチームが2次医療圏レベルでの職種別自殺リスクを再集計しており、平成27年度半ばには利用可能な状態になるとのことである。これにより、課題番号24730203において研究代表者が先駆的に行った自殺リスクの地域研究の研究成果と本研究課題の研究成果を合流させることができるようになるため、今後はそちらの面での研究を推進したい。また、自殺のオプション理論の論文はもうすぐ投稿可能な状態となるため、そちらも早急に仕上げたい。
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Causes of Carryover |
当該研究費の「その他」経費で捻出する予定であった、World Finance Conference and Banking Symposium学会への参加費が、参加手続きの遅れにより予想されていた金額より高額となったため。その全額を所属大学からの個人研究費より支出した。この結果残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の学会参加費用に充てる予定。
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