2014 Fiscal Year Research-status Report
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26780143
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
蔡 大鵬 名古屋大学, 高等研究院, 准教授 (20402381)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 突発的なネガティブなショック / 企業の倒産 / 企業への救済策 / 国際的協調枠組み / 企業倒産のドミノ効果 / 風評被害 / 産業組織論 / 交渉ゲーム |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、日本経済は、リーマンショック、資源価格の高騰など、一時的なネガティブショックに次々と見舞われてきた。そうした中、東日本大震災が日本経済に未曾有の大打撃を与えた。地震・津波・原発事故により、生産設備や社会資本などが破壊され、生産力が落ち込む「ネガティブ供給ショック」が発生すると同時に、被災、自粛、風評被害が需要を抑制し、「市場の収縮」という「ネガティブ需要ショック」も企業に襲いかかった。震災をきっかけとした倒産・廃業が急増しており、とりわけ中小企業への影響が深刻に現れている。このような非常時においては、積極的な財政出動が求められるものの、今日のような日本の厳しい財政状況の下では、限られた公的資金をいかに効率よく企業向けの補助金等の公的支援として活用するかが喫緊な課題として浮上した。 そこで、本研究の目的は、産業組織論等の分析手法を応用し、突発的なネガティブショックが発生し、倒産に追い込まれる企業が出た場合、公的資金の注入による企業への最適な救済策を提示すること、またその達成に不可欠な国際間の協調枠組みのあるべき姿を提示することである。平成26年では、まず、これまでの議論をさらに複数の国を含むモデルに拡張し、また交渉ゲームの分析手法も取り入れながら、国家間の利得調整プロセスを明示的に分析した。これにより、国際的協調枠組みが最適な救済策に及ぼす影響を明らかにした。次に、これまで外生的に捉えてきた突発的なネガティブなショックによる一部の企業の倒産が連鎖的に他の企業に負の影響をもたらす風評被害のようなドミノ効果を内生化し、内生的なドミノ効果を考慮した場合の突発的なネガティブショック発生時の最適な救済策を分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、産業組織論等の分析手法を応用し、突発的なネガティブショックが発生し、倒産に追い込まれる企業が出た場合、公的資金の注入による企業への最適な救済策を提示すること、またその達成に不可欠な国際間の協調枠組みのあるべき姿を提示することである。平成26年度において、これまでの議論をさらに複数の国を含むモデルに拡張し、また交渉ゲームの分析手法も取り入れながら、国家間の利得調整プロセスを明示的に分析した。これにより、国際的協調枠組みが最適な救済策に及ぼす影響を明らかにした。次に、これまで外生的に捉えてきた突発的なネガティブなショックによる一部の企業の倒産が連鎖的に他の企業に負の影響をもたらす風評被害のようなドミノ効果を内生化し、内生的なドミノ効果を考慮した場合の突発的なネガティブショック発生時の最適な救済策を分析した。これにより、より現実に即した政策インプリケーションが得られたと考えられる。現在、投稿に向けて、上記の分析結果を論文としてまとめつつある。 なお、期間中において、本研究と同様な交渉ゲームの分析アプローチを用いる学術論文2編、また産業組織論の分析手法を用いる論文1編が国際専門誌によりアクセプトされ、本研究におけるモデル分析のさらなる精緻化につながった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、最新の文献を検討するとともに、研究の精度を向上させつつ、以下の研究を進め、総合的理論モデルを構築するための基礎を築く。 研究を計画通りに遂行するために、国内外の学会・研究会で積極的に報告するとともに、研究交流も積極的に行いたい。得られた成果は、学術論文にまとめ、関連する国内外の学会において、報告する。得られたコメントに基づき、論文をさらに修正し、より完成度の高いバージョンを関連する国際専門誌などに投稿する。 一方、昨年度の実施ができなかった東日本大震災によって中長期的に重大な危機に立たされる被災地における現地調査を行い、被災状況と復興の現状の把握に努める。
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