2014 Fiscal Year Research-status Report
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26780154
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
大木 良子 日本大学, 商学部, 助教 (20612493)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 産業組織論 / 競争政策 / オンライン流通 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度においては、オンライン流通の実態と既存判例の調査によって分析対象の現状を把握し、本質的に競争に影響している要因を見極めること、およびそれらを踏まえて経済モデルを構築することに注力した。また、平成26年度の公正取引委員会競争政策センターにおける客員研究員を拝命し、そこでオンライン流通を念頭に置いたプラットフォーム事業者の競争に関する研究プロジェクトに携わることができた。そのため、公正取引委員会の担当者、法学者、実証・理論両分野の経済学者と定期的に議論を重ねることが可能になり、また実際のオンライン流通事業者の調査にも接することができた。 それらを踏まえて、「オンラインプラットフォームにおける排他的取引契約」と「地理的制約がないオンライン流通と既存流通との競争を踏まえた排他的取引契約」の2つのトピックについて、経済理論論文としてまとめる作業を継続しており、27年度前半のうちに完成する予定である。 さらに、目標として掲げた判例収集については、Association of Competitive Economics 年次大会(於ドイツ、マンハイム大学)に参加し、主にヨーロッパにおける最新の判例に接し、当局・経済学者・当事者側コンサルタントの3者の立場からの経済分析を聞くことができた。その際、この分野のリーダー的存在であるMartin Peitzマンハイム大学教授と親交を得ることが出来たのは、今後の研究の継続に大きな意味を持つ。Peitz教授は27年度来日予定があり、継続して本研究への助言を仰ぐ。また日本の判例収集については、審判決研究会(岡田羊祐一橋大学教授、林秀弥名古屋大学教授主宰)へ参加し、定期的に審判決に関する情報収集を行った。本研究で得た知見を生かし、当研究会において発行予定の研究書において、流通に焦点を当てた判例分析を担当、現在執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
情報収集、及びネットワーキングについてはほぼ計画通りに行うことができている。特に、流通業者による定額料金制の参入阻止効果についての経済分析を行い、英文論文を1本、査読付雑誌に公刊することができた。 さらに、平成26年度の情報収集を元にして、新たにオンライン流通業者の特徴である、地理的制約が無いこと、多面的市場におけるプラットフォームの役割を持つことの2点に焦点を当てた新しい理論論文を2本構想することができた。この2本については、すでに初期的な分析を終了し、大まかな結果を得ており、27年度中には完成させる目処が立っている。 また、研究計画上にあった実態調査における実務家等へのヒアリングについては、前述の公正取引委員会競争政策センターのプロジェクト参加によって、プロジェクト内で分担して行っているヒアリング結果によって効率的に代替することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成27年度においては、これまでの調査・分析を取りまとめる形で研究成果の発表、公表に注力する。本年度前半では、前年度に基本的な分析を行っている2つの経済モデルについて、2本の英文論文として完成させディスカッションペーパーとして公表する。また、情報収集を継続するため、関連図書・資料の収集し、国内外の研究会、学会へ参加する。 本年度後半は、本研究の最終的な研究成果の報告・公表に焦点を絞る。上記のディスカッションペーパーを英文雑誌に投稿し、刊行を目指す。同時に国内学会だけでなく、小規模な研究会でも報告を行い関心の近い研究者からの意見を踏まえて論文を改訂していく。さらに、前年度から継続している判例調査を元に、2つ程度の国内外の関連判例を選び、日本語でケーススタディを書き、競争政策担当者や競争法学者への問題提起を行うことで、継続的な学際研究の基礎を作ることを目指す。
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Causes of Carryover |
所属先の備品の更新に伴い、比較的新しく性能のいいPCの貸与があり、デスクトップパソコンの購入を見送ったため。 また、公正取引委員会のプロジェクトに客員研究員として参加できたため、センタースタッフや他の研究員との作業分担により、予定していた実態・判例調査にあたっての資料整理に伴う人件費を支出する必要がなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
所属先が変更になり、新しい所属先ではパソコンの貸与が無いため、26年度に見送ったデスクトップPCを27年度の早い段階で購入し、論文データや資料の保存を確実、かつ効率的に行う。 また、最終年度であるため、研究についての議論および成果の発表を行うために国内外の学会や研究会に参加することを予定しており、その旅費として支出することを計画している。特に、日本経済学会や応用経済学会等への参加により、関心の近い研究者からの助言を得ることを予定している。さらに、継続的に近年出版された競争政策や経済法関連の専門書を購入することを計画している。
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