2015 Fiscal Year Research-status Report
外国人労働者を雇用する企業の生産性に関する実証研究
Project/Area Number |
26780171
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
橋本 由紀 九州大学, 経済学研究科(研究院), 講師 (30707675)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 外国人労働者 / 高度人材 / 技能実習生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,第一の成果として,2000年と2010年の国勢調査の個票データを用いて,日本で専門職やホワイトカラーとして働く大卒以上の外国人について,彼らの個人属性と就業場所の特徴を明らかにした。世界の国々が高度人材獲得競争を繰り広げる中で,日本も2000年代後半から経済成長に寄与する高度人材の積極的な受け入れを推進している。日本の外国人材の高度化の程度の測定は,政策評価の観点からも,重要な意義をもつ。
具体的には,専門的・技術的職業従事者を,高度人材外国人(専門職外国人)と定義し,国籍別,産業別に,専門職就業確率を推定した。その結果,国籍別,産業別いずれの分析からも,2000年から2010年にかけて,外国人の専門職就業確率が上昇していた。特に,運輸・情報産業での,専門職就業確率の高まりは顕著で,同産業が日本で就労する外国人の高度化に大きく寄与した可能性が高い。専門職外国人の就業場所選択に関する分析では,多くの先行研究で指摘されたような同国籍者が多い地域(都道府県)を選択する傾向は観察されなかった。就業地選択に有意な効果が観察されたのは,国籍を問わず同一産業で働く外国人の専門職比率が高い地域であり,この結果は,地域の外国人の専門職ネットワークの存在が,新規に入国する高技能外国人の呼び水的な役割を果たしている可能性を示唆する。
第二の成果は,外国人技能実習制度の課題に関する検討である。専門的でない外国人労働者の受入れの拠り所となっている同制度は,受入れ職種の増加や実習期間の延長などによって制度の適用範囲を拡大し,日本の労働力人口の減少を下支えしているとも言われる。研究では,同制度が本質的に抱える問題点について,途上国に移転される技能の質,賃金水準の設定,労働者の移動の制約の観点から考察し,論文を執筆した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「外国人雇用状況の届け出状況」等のデータ利用の採択と送付が,年度後半にずれ込んだため,外国人雇用企業の生産性分析については,データの整理までしか進められなかった。その間,国勢調査等のデータを用いて上記の研究を進め,これらの研究に関しては,成果の発表まで行うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
「外国人雇用状況の届け出状況」や「工業統計調査」のデータの整理,回帰分析,論文の執筆を2016年夏ごろまでに目途を立て,年度内に国際学会で報告したい。高度人材外国人の論文についても,査読雑誌に投稿し,年度内の採択を目指す。
|
Causes of Carryover |
「外国人雇用状況の届け出状況」等のデータの提供が遅れたため,論文の執筆までには至らず,予定した学会への応募や論文の英文校正用に計画していた経費を支出しなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文を速やかに執筆し,英文校正を行った上で,国内外の学会に応募,発表する。
|
Research Products
(5 results)