2014 Fiscal Year Research-status Report
出生率を効率的に上昇させるような子育て支援政策の設計:予算配分に注目した実証分析
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26780174
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
荒渡 良 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (20547335)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 子育て費用 / 等価尺度 / ロスバース法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度には日本における子育て費用の時間を通じた変化を計測した.具体的には,家計経済研究所による「消費生活に関するパネル調査」の個票データを用いたパネル分析を行うことで,バブルが崩壊し,日本が失われた20年に入った時期に当たる1993年から1999年までの期間と,その10年後に当たる2003年から2009年までの期間における子育て費用を計測した.子育て費用の計測方法としては,家族構成が異なる家計が同一の厚生水準を達成するために必要な支出の差を表す「等価尺度」を用いた.また,等価尺度を計測するためには何かしらの方法で夫婦の厚生を計測する必要があるが,本研究では成人用の衣服や酒など,大人だけが消費する「成人財」への支出額によって夫婦の厚生水準を計測するロスバース法を採用した. 本研究の意義は以下の通りである.これまで,等価尺度を用いた日本の子育て費用の推計は数多くなされてきたが,それらの研究はある一時点における子育て費用の推計に主眼が置かれていた.そのため,中・長期的に子育て費用がどのように変化してきたかはこれまで明らかにされてこなかった.それに対して,二つの期間のパネルデータを用いることで景気変動の影響を適切にコントロールしつつ,長期における子育て費用の変化を分析している点が,本研究の意義である. 分析の結果,1993年から1999年までの期間と2003年から2009年までの期間において,中学校入学前の子供の子育て費用が増加していることが確認された.これは,以前と比べて子育て期間の前半における費用負担が重くなっていることを意味する.特に,2歳以下の子育て費用の増加が顕著であるという,先行研究では示されてこなかった結果を得た.以上から,子育て期間の前半における費用が増大しており,若い夫婦が子供を育てることがますます難しくなっていることが本研究によって示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標であった等価尺度を用いた子育て費用の計測が完了した.また,本年度の研究を行うに際して子育て費用の計測に関する知識の獲得,文献の整理等が順調に進んでいるという点からも,おおむね順調に進展していると自己評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は今年度に行った分析を基にして,段階的に子育て費用の計測と効率的な児童手当制度の設計についての分析を進める.具体的には,以下の様な方法を予定している.
平成27年度には平成26年度に行った研究成果を学術雑誌で発表することを目指す.平成26年度に行った分析結果は既に論文としてまとめられており,現在査読付きの学術雑誌に投稿中である.改訂要求があればそれに応じながら,論文の内容を改善する.次に,平成26年度に行った研究では居住地域が子育て費用に与える影響は全く考慮されていなかった.そこで,平成27年度には家計の居住地域別の子育て費用に注目した分析を行う.
平成28年度には平成27年度に行った分析結果を論文としてまとめ,査読つきの学術雑誌に投稿する.同時に,保育園の設置・運営が出生率に与える効果の比較と効率的な予算配分の設計についての分析を行う予定である.
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Research Products
(1 results)