2014 Fiscal Year Research-status Report
マイクロデータを用いた医療・介護保険制度の非効率性に関する経済学的分析
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26780180
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
湯田 道生 中京大学, 経済学部, 准教授 (30454359)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 医療経済学 / ミクロ計量経済学 / 医療保険制度 / 介護保険制度 / 医療扶助制度 / 東日本大震災 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,研究計画で示した三つの研究課題(1)個票パネルデータを用いた医療・介護需要に関する実証研究,(2)医療扶助制度における事後的モラルハザードとエージェンシー問題,(3)社会環境と出産費用のうち,(1)と(2)に取り組んだ。 分析(1)については,経済産業省が管理している「くらしと健康の調査(Japan Study for Aging and Retierment, JSTAR)」を用いて,以下の二つの分析に取り組んだ。(1a)How Informal Caregivers' Health Affects Recipients,(1b)東日本大震災が高齢者の健康・医療需要に与えた影響 (1a)は,中高年の家庭内介護者の健康状態が,彼らの両親(義理の両親も含む)の要介護状態にどのような影響を与えたのかを検証したものである。分析の結果,介護者の健康状態が悪化すると,両親の要介護状態が悪化することが確認された。また,この影響は親子の遺伝的な関連を取り除いても確認された。 (1b)は,2011年に起こった東日本大震災が,中高齢者の健康状態と医療・介護需要に与えた影響を検証したものである。仙台市のサンプルを処置群,その他の市区町村のサンプルを対照群として,暫定的に分析を行った結果,震災によって処置群のいくつかの健康状態が有意に悪化していることが確認された。 (2)については,厚生労働省が実施・管理している「社会医療診療行為別調査」と「医療扶助実態調査」の個票データ(レセプトデータ)を用いて,医療扶助受給者(生活保護受給者)と健康保険加入者の月額医療費と1カ月の通院日数を比較したものである。入院・入院外の双方において,医療扶助受給者の医療費・通院日数の平均値は,健康保険加入者のそれらに比べて,有意に多いことが確認された。また,入院医療においては,生活保護の受給という計量経済学上のセレクション問題を考慮して回帰分析を行った結果,医療扶助受給者の医療費は,健康保険加入者のそれらに比べて,有意に多いことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,「研究実績の概要」に示した二つの研究のいずれかのデータ整備が主たる作業であったが,いずれの分析もデータクリーニングと暫定的な分析結果を出すところまで作業が進んだため。
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Strategy for Future Research Activity |
いずれの研究課題も,より精緻な分析を行って,国内外での論文報告や学術雑誌への論文投稿を行っていきたいと考えている。現段階においては,分析(1a)はすでに国際的な学術雑誌に論文を投稿済みであり,(2)の入院医療の分析については,論文執筆を残すのみとなっている。したがって,まずは(2)の第一稿を完成させることが短期的な作業となる。 残りの(1b)と(2)の外来医療に関する分析については,今後より精緻な分析を行って,今年度中に暫定的な分析結果が得られるように努力したいと考えている。
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Causes of Carryover |
予想以上に他の業務が多忙であったため,物品の発注を計画的に行うことができなかったことにより残額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究の成果は,原則として国際的な学術雑誌に論文を投稿することを予定している。したがって,平成26年度の残額は,それらの英文校正費に充てる予定である。
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