2017 Fiscal Year Research-status Report
マイクロデータを用いた医療・介護保険制度の非効率性に関する経済学的分析
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26780180
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
湯田 道生 中京大学, 経済学部, 准教授 (30454359)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 医療経済学 / ミクロ計量経済学 / 医療保険制度 / 医療扶助制度 / 帝王切開出産 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,研究計画で示した三つの研究課題のうち,(2)医療扶助制度における事後的モラルハザードとエージェンシー問題と,(3)社会環境と出産費用に取り組んだ。 (2)は,厚生労働省が実施・管理している『医療扶助実態調査』と『社会医療診療行為別調査』の個票データを使って,医療扶助受給者(生活保護受給者)と健康保険加入者の医療利用を比較したものである。 入院と入院外では,医療需要・供給行動に大きな違いがあるため,分析においては,入院と入院外を分けて分析を行った。いずれの分析においても,被保護者の医療費が健康保険加入者の医療費よりも有意に高いが,弧弾力値は比較的非弾力的に推計されたことが概ね確認された。入院・入院外に関する双方の分析は,学術論文としてまとめており,現在,国際的な学術雑誌に投稿中である。 (3)は,厚生労働省が実施・管理している『医療施設調査』の個票データを使って,ここ数十年の社会環境の変化が産科医の分娩方法選択に与える影響を推定したものである。 医療施設単位のパネルデータを使った分析の結果,公立病院であることや時間外診療に対応している医療機関,年少人口数の増加によって,帝王切開出産数・同割合が有意に上昇することが分かった。加えて,医療訴訟件数の増加が帝王切開出産数,病床数の増加が帝王切開出産割合をそれぞれ有意に上昇させていることも分かった。また,これらの傾向は診療所で多く見られており,病院では余り見られないことも分かった。本分析は,現在,国際的な学術雑誌への投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
それぞれの分析は,当初の研究計画よりも精緻に行っているが,残す作業は学術論文として公刊することを目指すのみとなっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
全ての論文が,国際的な学術雑誌に査読付論文として掲載されるように最大限努力する。
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Causes of Carryover |
2017年4月に国際的に著名なオープンアクセス雑誌に論文を投稿した。しかし担当エディターが音信不通になったこと(同年9月),新エディターが査読者を見つけられない(同年11月)といった理由で審査が遅れた。もともと,残額を掲載料に当てようと計画していたが,上記の遅延により採択年度が次年度にずれることになったため,補助事業期間の延長申請を行った。
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