2014 Fiscal Year Research-status Report
地方政府のコモン・プール問題と行政広域化の実証研究
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26780181
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
広田 啓朗 武蔵大学, 経済学部, 准教授 (10553141)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 市町村合併 / コモン・プール問題 / 類似団体 / 合併特例 / 地方債 / 地方議会 / 政府間財政関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、市町村合併を実施した団体において、ある特定の団体が新団体間で費用を分け合うことを期待して、合併前に過剰な支出や公債発行により自地域の便益を増やす行動をとるというコモン・プール問題の検証を実施した。主に、市町村合併によって、各市町村の地方債発行がどのように変化したかを検証した。本研究では、同じような地域条件にある未合併団体と比べて、合併団体は合併直後か ら平均的に地方債を増加させることが明らかになった。さらに、地方債残高が高い団体が、合併後も地方債発行が高いという傾向を確認することができた。本研究は、国内査読付き雑誌『地方財政』第53巻12号に掲載されている。 次に、コモン・プール問題の大きさに影響を与える可能性があるものとして、市町村土木費に対する地方議員数の影響を実証的に検証した。市町村議員数は人口に応じて上限 が法的に決定されているため、「非連続回帰デザイン」で実証分析をおこなった。分析結果より、土木費と議員数では正の関係を確認しており、コモン・プール問題が発生している可能性を示すことができた。本研究は海外査読付き雑誌『The Empirical Economics Letters』Vol.13 No.9に掲載されている。 また、市町村合併時に、地方議会がどのような要因で合併特例を適用したかを実証的に検証した。分析の結果、小規模団体ほど旧団体の議員が全て在任することができる在任特例を適用し、大規模団体は議員定数を2倍まで増やすことができる定数特例を適用していることが明らかになった。また、様々な財政特例措置により日本においてコモン・プール問題が発生している可能性を示唆した。本研究は、海外査読付き雑誌『The Japanese Political Economy』(2015年近刊)に掲載される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、初年度は、データ収集・整理及び基礎分析を集中的におこなう予定であったが、分析及び論文執筆が予定以上に進めることができた。当初は、1年に1本の論文執筆と投稿を予定していたが、結果として3本の査読付き雑誌に掲載が決定することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画より早い進捗状況ではあるが、初年度に実施できた点は、統計的な基礎分析に特化している。 現段階では、情報公開請求などを通じた必要なデータ収集とヒアリング調査、最新の定量分析を実施するという段階には至っていない。さらに、今後の研究では、コモン・プール問題という統一的な視点から、複数の分析手法を用いた研究成果を相互に関連させ検証することで、財政赤字の制度的要因について明らかにすることを目標とする。
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Causes of Carryover |
研究計画作成段階では、研究費の一部を国際学会での報告のための出張旅費として使用する予定であった。しかし、家族の健康上の理由により、ある程度の日数が必要な海外出張を実施することが困難になったため、平成26年度は、海外出張の計画を断念し、国内学会での発表や出張のみにとどめることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、前年度に使用することのできなかった研究費を国際学会での報告など海外出張旅費に充てることを計画している。
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Research Products
(13 results)