2014 Fiscal Year Research-status Report
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26780182
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Research Institution | Osaka University of Commerce |
Principal Investigator |
中野 浩司 大阪商業大学, 経済学部, 助教 (30711543)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 公共財供給実験 / 報酬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、地域の財産や資源をお互いに協力しながら守る制度を、実験手法を用いて明らかにすることを目的としている。2014年度は、当初の研究実施計画のとおり、グループメンバーに報酬を与える機会がある公共財供給実験を実施した。さらに、主に社会心理学で発展してきたsocial value orientation尺度を用いて被験者の選好を直接的に測り、その結果を公共財供給実験の結果と照らし合わせることで、人間の協力行動が促されるメカニズムを詳細に分析できるようにした。人間の選好の違いを考慮することは、地域社会で真に機能する制度をつくるために重要であるため、学問的だけではなく、社会的にも意義のある研究であったと考える。また、これまでの研究では、グループメンバーがランダムに変わる場合には、報酬を与える機会がある制度は、処罰を与える機会がある制度よりも、人間の協力行動を促すことが難しいと考えられてきた。2014年度に研究を進めていく過程で、これまでの報酬の仕組みを変えることで、人間の協力行動をさらに促す可能性が生まれることを確認したため、新しい報酬の仕組みを備えた公共財供給実験も実施した。もし、人間の協力行動を十分に促すことができるならば、処罰を与える機会がある制度よりも、報酬を与える機会がある制度のほうが望ましいことが知られているため、新しい報酬の仕組みを考案したことは、本研究課題の目的の達成度をさらに高めることに寄与したと考える。2015年度にも人間の協力行動を促す制度について検討する予定であり、2014年度と2015年度の研究成果によって、地域社会で人間が自発的に協力する制度について提案することができると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では、人間の協力行動を促すメカニズムを詳細に明らかにすることで、地域の財産や資源を自発的に守る制度づくりに貢献することを目的としている。2014年度の研究では、研究実施計画のとおり、グループメンバーに報酬を与える機会がある公共財供給実験を実施することで、人間の協力行動を促す仕組みを分析した。また、これまでの研究よりも、人間の協力行動を促すことができる可能性のある、新しい報酬の仕組みを備えた公共財供給実験を実施し、本研究課題の目的である人間の協力行動を促す制度設計をさらに進めることを可能にした。ただし、実験データを注意深く確認したところ、実験で用いたソフトウェアのプログラムに間違いのある実験が存在することが確認されたため、本研究課題の目的を十分に達成するために追加的な実験が必要である。なお、プログラムの間違いはわずかであるため、2014年度と同様の実験結果が得られると予想しており、実験データを分析する際に用いた手法は、そのまま用いることができるため、研究実施計画を大きく変更する必要はないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度には、グループメンバーに処罰を与える機会がある公共財供給実験、および処罰と報酬を与える機会がある公共財供給実験をおこなう予定である。また、2014年度にプログラムの間違いが見つかった実験も実施する予定である。いずれの実験もsocial value orientation尺度によって、一人ひとりの被験者の選好を測ることで、それぞれの制度が人間の協力行動を促すメカニズムを詳細に明らかにする。最後に論文としてまとめる。本研究課題の成果は、さまざまなタイプの人間における協力行動を理解できることに加えて、新しい制度を提案することに繋がるため、広く社会に発信する方法についても模索する。
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Causes of Carryover |
一つ目の理由は、2014年度に参加できなかった学会に参加するためである。これは、本研究課題の成果を発表する、または最新の研究成果を聴取するために必要である。二つ目の理由は、2014年度に実施した実験データを注意深く確認したところ、プログラムに間違いのある実験が確認されたからである。プログラムの間違いは僅かではあるが、2014年度に進めた研究を成果として発表するために必要である。また、本研究課題の目的である、人間の協力行動を促す制度設計の実現には、2014年度および2015年度の実験結果を総合的に考えることが必要であるため、本研究課題全体にとっても重要な追加実験となる。なお、本研究課題の全体的な支出は変わらないようにする。2014年度に支出予定であった物品費は、学内および実験施設に備え付けてあるものを利用できるように手続きしたため、研究実施計画のとおりに着実に進めることができる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額(214,078円)は、学会出張経費および追加的な実験に使用する。学会出張経費は、本学のある関西圏で開かれる予定の学会に参加するために用いるため、15,0000円程度を想定している。実験費は当日の被験者のパフォーマンスに応じて変わるが、20万円程度が必要になると考えている。いずれの支出も本研究課題全体の目的を達成するために必要となる経費である。
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