2017 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical and Policy Analyses on the Multiple Financial Crises
Project/Area Number |
26780185
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中田 豪 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (70509439)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ソブリン債 / 預金取り付け / 規律付け |
Outline of Annual Research Achievements |
預金取り付けと債務危機に関する研究、および金融危機が伝染するもとでの負債の規律付けの効果に関する研究を行い、英国の王立経済学会などにおいて発表した。 一つ目の研究については、預金取り付けと債務危機が互いに影響しあい、ある種の悪循環があることを示すモデルを過去に構築している。本プロジェクトでは、このモデルを2国モデルに拡張し、さらなる分析を行い望ましい政策を探った。 二つ目の研究では、短期負債が銀行を規律づけるとする先行研究を再検討した。先行研究では、要求払い預金あるいは短期負債といった形で銀行が借り入れを行うと、ひとたび銀行経営者が債権者の意に反する行動をとると銀行から預金が引き出される。これを危惧する銀行経営者は債権者の利益にかなった行動をとろうとする。しかしながら、本研究のように金融危機が伝染するもとでは、ある銀行の収益は銀行以外の金融市場からも影響を受ける。従って、銀行経営者のインセンティブは金融市場の状態に依存する。このような環境においては、ある条件のもとでは要求払い預金および短期負債が銀行経営者を規律付けないことがあることが示された。 さらに、情報の精度が金融危機に及ぼす影響も探った。どの投資家の得る情報がより正確か、あるいは、いずれの金融市場の情報がより精度が高いかといったことが、公的債務危機、預金取り付け、金融危機の伝染、規律付けなどに影響を及ぼすことが分かった。これらの知見は、情報開示の是非や金融規制に関して今後分析していくにあたって有益な示唆を与える。
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