2014 Fiscal Year Research-status Report
地方における株式市場の制度形成と社会的基盤に関する歴史分析
Project/Area Number |
26780195
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
三浦 壮 鹿児島大学, 法文学部, 准教授 (60432952)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 産業革命 / 工業化投資 / 渡邊祐策 / 高良宗七 / 石炭鉱業 / 株式市場 / 地域工業化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究課題の主要フィールドである宇部石炭鉱業および製造業の史料調査を行った。宇部系列諸企業の主要株主を輩出した,島地区に所在する旧家を調査し,金銭出納簿,財産目録,炭鉱経営に関わる一次資料の閲覧を行い,使用の許可をいただいた。同時に資料整理を行い,目録を作成した。金銭出納簿に関しては平成26年度に入力作業を完了し,分析済みであり,平成27年度の学会発表を目指している。 分析の概要としては,これまでの申請者の研究成果である,「連帯的強制」と「貢献意欲」という,地方資産家が地方企業に投資する際の動機を,より詳細に検討した。記述資料については,地元新聞で宇部の株主や有力者が購読していた『宇部時報』の記事を利用した。その上で,炭鉱株主の家政に関わる「金銭出納簿」を1921年から1946年までの期間,連年で追跡調査した。その結果,①宇部の諸製造業は「地域の共有財産」という位置づけを与えられていたこと,②しかし宇部の製造業株の時価が払込金額を下回ること,③それにもかかわらず,宇部の株主が地元製造業株を積極的に購入し,強い工業化志向をもっていたこと,④工業化資金の調達では,地域の共有財産である石炭から得られた利益金が転用されたこと,などが判明した。 その他,諸製造業の経営史については,株式会社宇部鉄工所および匿名組合宇部新川鉄工所の一次資料について,データ入力を完了するところまで進捗した。平成27年度中に分析を終え,可能であれば学会発表を行い,論文を作成するところまで進みたい。 宇部の炭鉱管理組織である宇部共同義会の史資料についても,学びの森くすのきにて複写を行い,明治期における炭鉱業の予算書を入力し,当該期における炭鉱経営の実態について分析をおこなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
旧家史料の調査と分析,および目録作成が想定より早いペースで進展し,宇部鉄工所のデータ入力も順調に進んだため。
|
Strategy for Future Research Activity |
主として平成26年度に進捗した,旧家文書研究・宇部鉄工所研究の論文作成が目標となる。宇部鉄工所研究に関しては,周辺資料をもう少し集めたいので,『宇部時報』(宇部市立図書館所蔵)の調査を行う予定である。一方で,宇部地域旧家の地縁・血縁関係に関する資料調査と聞き取り調査を行う必要があり,いずれも宇部へ出張調査する。 また近年,宇部地域以外の地方株式市場の実相に関する知見が弱いことが,研究を位置づける際の難点であることがわかり,他地域で地方株式市場に投資を行う投資主体の財産目録や金銭出納簿があれば,副次的に調査したいと考えている。関連する学会発表も積極的に参加し,学識を深めたい。
|
Causes of Carryover |
予想よりも申請者本人が目録作成やデータ入力を行う場面が多く,人件費が予想よりもかからなかった。また,物品費についても予想よりも購入する場面が多くなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後は,史料調査の旅費や,データ入力を増やすなどし,適正に執行していきたい。
|