2014 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ・ステイクホルダー志向型企業倫理モデルの理論的・実践的研究
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26780205
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
柴田 明 香川大学, 経済学部, 准教授 (10550098)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 経営学史 / 企業倫理 / ステイクホルダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主に文献研究によって、これまでのドイツ経営経済学の主要学説や企業倫理に関する主要学説を検討し、とりわけ理論面における「ステイクホルダー」の位置づけを確認し、また付随的な研究として、現代ドイツ企業倫理において有力な地位を占める「経済学的倫理学」の方法論的な基礎づけを試みた。 前者の研究では特に、成立期から1960年代後半の西ドイツ経済の停滞期まで、ニックリッシュをはじめとする、いわゆる「規範的経営経済学」の流れを除いて、ドイツ経営経済学においては真正面から「ステイクホルダー」を扱った理論はほとんど存在しなかったこと、そして1960年代後半の西ドイツ経済の停滞期から堰を切ったように「ステイクホルダー」を取り上げる理論が登場したことを明らかにした。このことは、従来の「ドイツにおけるステイクホルダー志向」というイメージから見れば意外に思われるが、「経営共同体」を正面から議論してきた規範的経営経済学が「労働者」を主要なステイクホルダーとしてとらえてきたことが、ドイツの労使を中心とするステイクホルダー志向を形成してきたといえる。またここで明らかにした60年代以降の理論展開は、アメリカの「市場志向」ではなく、ドイツあるいはヨーロッパの「制度志向」を反映した、国民経済との関連から見たステイクホルダーのあり方を反映させており、この意味でドイツの理論的側面における「ステイクホルダー」のあり方の独自性を明らかにすることができたといえる。 後者の研究は本研究課題に直接関連するものではないが、前者の研究においても取り上げた、ホーマンを中心とする「経済学的倫理学」を、ポパーの方法論によって基礎付けることをこころみたものであり、直接的な関連はないが、しかしここでもドイツの「制度志向」を確認することができたという点で、間接的に研究題目に貢献するものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は文献研究を中心として、当初の計画のすべてとはいえないものの、概ね予定通りの研究を遂行できた。とりわけ企業倫理を中心として検討できなかった学説については、次年度に検討することで十分計画が達成されうるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は在外研究の一環として1年間渡独し、現地にて引き続き諸学説の検討と「ステイクホルダー」概念の検討、そして理論研究者や実務家などへのインタビューなどを遂行する予定である。
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Causes of Carryover |
文献と旅費がほとんどであるが、当初予定していた文献が絶版等の理由ですべて手に入らなかったため。旅費も当初計画を下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に渡独するため、旅費や渡航費として使用する予定である。
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