2015 Fiscal Year Research-status Report
利益還元と現金保有―ケータリング理論を通じた諸仮説の再検証―
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26780208
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
山口 聖 甲南大学, 経営学部, 准教授 (40548757)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自社株買い / マーケットタイミング / 現金の価値 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度から継続している、二つの実証分析を論文として仕上げ、海外ジャーナルへの投稿を行った。ケータリング仮説から着想を得た、現金の価値と自社株買いによる現金の還元の関係については、投稿の結果、現金の価値が低く評価される現金を明らかにする必要があるというコメントを得た。先行研究によれば、企業統治力(コーポレート・ガバナンス)が弱い企業において、現金の価値が低く評価されるという結果が明らかにされているため、現在、ガバナンスの構造に着目し、現金の価値と自社株買いの関係の再検証を行っている。 また、昨年度から継続している、自社株買いのマーケットタイミング仮説についても、海外ジャーナルへの投稿を行った。レフェリーレポートに従い、論文を修正し、再投稿を行った。この論文については、現在継続審査中である。 本年度は、さらに、2001年から2004年までに行われた、商法210条に基づく自社株買いのマーケットタイミング仮説についての検証も行った。この方法を用いた場合、企業は株主総会決議の翌日から、翌年の株主総会開催日までの1年間に、自由に自社株買いが実施可能となる。上述の自社株買いとは異なる制度に基づく自社株買いをサンプルとして分析した場合も、日本企業の経営者は、株価が低く評価される時点を選択して自社株買いを実施していることが明らかになった。マーケットタイミング仮説については、先行研究が豊富なため、既存研究のレビュー論文を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ケータリング仮説から着想を得た、現金の価値と自社株買いの関係や、自社株買いのマーケットタイミング仮説の検証に時間を費やしたものの、論文は最終段階に位置しており、データベースの構築がすでに終わっていることから、自社株買いの自己株投資仮説や配当代替仮説などの諸仮説の検証について、即座に取り組むことができると考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
同じくケータリング仮説から着想を得た、自社株買いの自己株投資仮説や配当代替仮説などの諸仮説の検証を行い、本研究課題を遂行する。
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Causes of Carryover |
大学移籍に伴い、購入予定のデータベースが移籍先大学に完備されていたことから、新規でのデータ購入の必要性がなくなった結果、研究を遂行するために必要な費用が、当初の申請額に満たなくなった。今年度は、これらの額を利用して、英文校正、海外ジャーナルへの投稿、学会発表の回数を増加することで使用予定であったが、当初の計画以上に研究活動を行うことができず、次年度使用額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は研究計画の最終年度であるため、研究のペースを上げ、確実に研究課題を完遂するべく、設備の増加や海外ジャーナルへの投稿に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)