2014 Fiscal Year Research-status Report
イノベーションの新規採用・代替採用に国の特性が与える影響の解明
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26780215
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
大内 紀知 青山学院大学, 理工学部, 准教授 (10583578)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イノベーション / 普及モデル / 新規採用 / 代替採用 / 国の特性 / 国民文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、国の特性によって、新規採用・代替採用のスピードがどのように異なるかが未解明であるために、イノベーションの普及戦略の立案が困難になっている現状を踏まえ、イノベーションの普及における「新規採用」と旧イノベーションからの「代替採用」に、国の特性が与える影響を解明することをねらいとした。 3年計画の初年度である平成26年度においては主に次の点に着手した。1. 研究の基礎固めとして、多層な学術領域の基礎研究レビューを通じた学際的アプローチの基礎の構築。2. 世代間代替を有するイノベーションについて、新世代のイノベーションの普及を「新規採用(旧世代を利用していないユーザーの新規採用)」と「代替採用(旧世代を利用していたユーザーの旧世代から新世代への代替採用)」のスピードを計測可能な普及モデルの開発。3. イノベーションの普及に影響を与える国の特性を表す指標の構築。4. ナローバンド回線とブロードバンド回線のデータを用いた普及モデルの検証。5. ナローバンド回線とブロードバンド回線のデータを用いた新規採用・代替採用のスピードと国の特性の関係性の解明。 その結果、以下の研究成果を得た。1. 58カ国におけるナローバンド回線とブロードバンド回線の採用スピード、代替スピードを計測。2. 採用スピード、代替スピードに国の経済的特性、文化的特性、地理的特性、文化的特性が与える影響の解明。特に、文化的特性として取り上げたHofstedeの国民文化の指標を用いた分析から、不確実性回避の強さが採用スピードに負の影響、権力格差の強さが採用スピードに正の影響、集団主義の強さが代替スピードに正の影響、男らしさが代替スピードに負の影響を与えている可能性が示唆。 上記の研究成果については、国際学会にて発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の平成26年度の実施計画である1.既存研究のレビュー、2.普及モデルの開発、3.普及モデルの検証のためのデータ整備、4.普及モデルの検証、5. 国の特性を表す指標の構築について、以下の通りおおむね順調に進展している。 1.既存研究のレビューについは、論文等のレビューに加え、学会、国際ワークショップへ参加し最先端研究の情報を入手することで、研究の基礎を構築することができた。2.普及モデルの開発については、世代間代替を有するイノベーションについて、新世代のイノベーションの普及を「新規採用(旧世代を利用していないユーザーの新規採用)」と「代替採用(旧世代を利用していたユーザーの旧世代から新世代への代替採用)」のスピードを計測可能な普及モデルを構築することができた。3.普及モデルの検証のためのデータ整備については、インターネット回線(ナローバンド回線とブロード回線)のデータを整備することができた。4.普及モデルの検証については、インターネット回線(ナローバンド回線とブロード回線)のデータを用いて実施した。5. 国の特性を表す指標については、経済的特性、文化的特性、地理的特性、文化的特性に関する基本データを整備することができた。さらに、インターネット回線(ナローバンド回線とブロード回線)のデータを用いて、「新規採用」と旧イノベーションからの「代替採用」に、国の特性が与える影響の分析まで行い予定より進捗できている。 ただし、タイで開催される国際会議に出席する予定だったが、政情の問題で延期になり参加できなくなったことは想定外であった。また、普及モデルの検証に用いるデータの収集は、インターネット回線(ナローバンド回線とブロード回線)のデータは収集できたが、他の製品やサービスのデータについて、検証に必要な期間、国についての収集が予想以上に困難であり、この点は課題として残った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、インターネット回線(ナローバンド回線とブロードバンド回線)を分析対象として普及モデルの検証を行った。今後は他の分析対象のデータを整備し、それらを用いて検証を行い、新たな知見を得るとともに、普及モデルの改良を行っていく。そのために、これまで構築した研究者のネットワークを活用しながらデータの整備を進めるとともに、国際ワークショップ、国際学会に参加し、海外の研究者の知見を積極的に取り入れ、モデル化を推進する。 国の特性を表す指標についても、平成26年度で、経済的特性、文化的特性、地理的特性、文化的特性に関する基本データを整備することができた。さらに、文化的特性などのデータを拡充していく予定である。また、文化的特性が普及に与える影響については、統計的な検証に加えて、社会科学的な視点からの検証も行う必要ある。これらに対応するために、社会科学を中心とする学会やワークショップにも参加し、研究者ネットワークを拡大することで、研究の推進を図る。
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Causes of Carryover |
タイで開催される国際会議に出席する予定だったが、政情の問題で国際会議が延期になり参加できなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
他の国際会議に参加し研究発表する予定である。
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