2015 Fiscal Year Research-status Report
イノベーションの新規採用・代替採用に国の特性が与える影響の解明
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26780215
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
大内 紀知 青山学院大学, 理工学部, 准教授 (10583578)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イノベーション / 普及モデル / 新規採用 / 代替採用 / 国の特性 / 国民文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年計画の2年目(平成27年度)は、イノベーションの普及に国の特性が与える影響を解明するという本研究のねらいに対し、1年目のナローバンド回線とブロードバンド回線に関する分析で得た研究成果に加え、1.情報の普及に関する分析、2.普及におけるネットワーク効果に関する分析を新たに実施し研究を進めた。 これまでのイノベーションの普及と国の特性の関係性に研究は、イノベーションの採用段階に着目したものが主であったが、近年ではインターネットにより消費者の情報検索が容易になり、イノベーションの採用の前段階である情報普及の重要性が増していることから、情報の普及に着目した。情報普及を表す指標としてGoogleの検索数の推移を用い、iPhoneの各世代の情報普及を国別に分析した上で、国の特性、特に国民文化との関係の解明を試み、情報普及においても国民文化の違いが普及スピードに影響を与えることを示した。 また、ICT製品やSNSに代表されるように、製品やービスの普及におけるネットワーク効果の重要性が高まっていることから、ネットワーク効果についての分析を行った。ネットワーク効果により先行者が優位であるはずのパソコン市場において、アップル社のPCがWindows搭載のPCに代わりシェアを増加させていることに着目した。アンケート調査に基づき、パソコン市場における消費者の選択意思決定行動にはPC市場そのもののネットワーク効果ではなく、スマートフォン市場とタブレット端末市場などの他製品市場の同期とネットワークサービス(他製品市場からのネットワーク効果)がPCの選択に大きく影響を与えていることが示され、ネットワーク型製品の普及メカニズムの解明と今後のイノベーションの代替に関する研究への新たな示唆を得ることができた。 上記の研究成果の一部は、国内学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
イノベーションの採用・代替の分析にあたって、イノベーションの採用の前段階である情報の普及、さらにはイノベーションの普及におけるネットワーク効果の分析を行い、今後につながる研究成果を得ることができた。しかし、当初の平成27年度の研究計画で予定していた、イノベーションの採用・代替を分析するための普及モデルの改良,国の特性を表す指標の改良については、進捗がやや遅れている。これは、イノベーションの普及に国の特性が与える影響を解明するにあたって、前述の情報の普及、ネットワーク効果に関する分析まで対象を拡大し、本年度(平成27年度)はそれらの研究の比重を大きくしたためである。これは、IoT (Internet of Things) の普及や、シェアリングエコノミーのようなビジネスモデルの普及への注目度が高まっている中で、情報の普及やネットワーク効果の分析、それらの普及と国の特性の関係性について明らかにする必要性がこれまで以上に高まっていること、さらにはそれらの研究成果は今後のイノベーション普及の研究に大きく貢献すると考えたためである。そのため、本年度の成果を今後のイノベーションの普及の分析に盛り込むことで、当初の想定よりも今後の社会のニーズにより適応した普及モデルの構築が可能になると考えている。 また、研究成果の発表については、本年度は日程の都合などもあり、国際学会での発表ができず、海外の研究者との意見交換の機会が減少してしまった。そのため、国の特性を表す指標の改良に関して、多面的な視点からの改良を十分に行うことができなかった。 以上の点を踏まえ、「やや遅れている」のが現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後については、本年度(平成27年度)の研究により得られたイノベーションの採用の前段階である情報の普及、イノベーションの普及におけるネットワーク効果に関する知見も生かしながら研究を進めていく。 まず、イノベーションの情報の普及と、イノベーションの採用の関係性と、それらに国の特性が与える影響を明らかにしていく。そのためには、イノベーションの情報の普及と、イノベーションの採用の両方を分析可能な分析対象を選定し、データ収集、分析を進めるとともに、社会科学的な視点を取り入れ、社会科学的な理論面からのアプローチも強化する必要がある。そのためにも、これまでの学会などを通じて構築した社会科学の研究者とのネットワークを生かすとともに、今年度も新たな学会に参加するなどして、社会科学の研究者とのネットワークを拡大していく。 次に、イノベーションの普及における他市場からのネットワーク効果の働きを明らかにすることで、イノベーションの代替のメカニズムを明らかにしていく。そこで、本年度得られた知見を基にし、シミュレーションなどの分析も加えていくことも検討する。 さらに、計画に対して遅れ気味である国の特性を表す指標の改良に関しては、海外研究者との意見交換の場として、国際会議だけでなく、定期的な意見交換を行っていくことで進捗の挽回をする。
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Causes of Carryover |
主な理由は、日程の都合などにより、当初予定していた国際会議への参加ができなかったこと、加えて,「研究がやや遅れている」ため論文誌への投稿などが遅れてしまったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度(平成27年度)は十分な研究発表ができなかったため、その分を平成28年度に国内学会、国際学会にて積極的に成果発表を行う。合わせて研究の進捗を挽回し、論文への投稿を行う。それらのための必要な費用に使用する予定である。
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