2015 Fiscal Year Research-status Report
次世代自動車の開発・生産におけるオープン・イノベーションと脱コモディティ化の両立
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26780220
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
佐伯 靖雄 立命館大学, 経営管理研究科, 准教授 (60580389)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | オープン・イノベーション / クローズド・イノベーション / EV(電気自動車) / 標準化 / 差別化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度の研究では,論文3(うち査読2),調査報告1,学会報告2(うち全国大会1),招待講演2の成果報告を行った。具体的な成果としては,自動車産業におけるEV事業で観察されるイノベーション戦略の諸類型を示し,戦略間の異同と戦略選択の論理を複数の事例研究から明らかにしたことである。主な点は以下である。まず,EV事業における市場参入当初のイノベーションの選択は,企業規模(資本力),技術開発力,商品企画力により規定されることが明らかになった。研究テーマで取り上げるオープン・イノベーションを選択する場合は,サンクコストが少なく事業歴が浅いほど有利である。次にイノベーションのあり方が遷移していく過程においては,当初の位置取りからいかに要素技術の制約に対応していくかが決定的に重要となることが判明した。 また,2015年夏には既存企業がオープン・イノベーションを採用することが可能かどうかという点を検証するために,ドイツのBMWライプツィヒ工場を調査した。オープン・イノベーションを採用する上で重要になる,標準化と固有性,効率性と収益化の両立という点については,BMWの事例を見るかぎり,巷間言われているほどEVという製品の標準化が進んでいるとは言い難いことが明らかになった。製品エンジニアリング,工程エンジニアリングのいずれにおいても,少なくとも他のガソリン車とも共有できる水準での標準化は達成されていないのである。 以上の成果からは,次世代自動車の開発・生産の現場においては,オープン・イノベーションの採用自体がまだ過渡期であり,範型としてのそれとはかなり乖離した導入に留まるという事実が判明した。エレクトロニクス産業のように一様なオープン・イノベーションのありようは当面の間自動車産業には期待できそうにない。これは本研究を進める上で意義のある発見であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果は順調に蓄積できている。ただし「研究実績の概要」でも示したように,研究テーマが想定したほど,現実の企業活動が活発になっていないことも確かである。とりわけオープン・イノベーションの著しい進展の帰結として製品がコモディティ化し,それにより引き起こされる過当競争という状態は今のところ懸念するほどではない。したがって最終年度での研究では,過当競争を避けるための差別化の視点は念頭に置きつつも,なぜ次世代自動車のビジネスではオープン・イノベーションが思ったように進んでいないのかという要因解析の視点も重要である。また,当初予期していないかった事態への対処については,研究の進捗に支障なきようエフォートを引き上げるとともに,外部有識者への助言をあおぐことで対処していく。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き実証面での調査を重点的に行い,研究最終年度として一定の結論を導き出すことができるよう進める。研究計画では海外調査を複数回予定していたものの,ここ1年でのとりわけ欧州情勢の悪化にともない,予定どおり遂行できないことが考えられる。その場合,調査先の変更や重点調査先の国内変更も検討しなければならない。
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Research Products
(7 results)