2015 Fiscal Year Annual Research Report
日本企業の多角化戦略と経営成果との関係に関する実証研究の批判的再検討
Project/Area Number |
26780229
|
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
上小城 伸幸 近畿大学, 経営学部, 准教授 (20411572)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 多角化戦略 / コングロマリット・ディスカウント / 資源配分プロセス / 相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は, 多角化戦略と経営成果との関係を実証分析し、企業が「コングロマリット・ディスカウント(Conglomerate Discount)」に陥ってしまうメカニズムを解明する研究の最終年度にあたるため,学会発表の準備や研究論文の執筆などの研究活動を進めた。本研究では,まず1990年代後半以降の日本企業の多角化戦略に注目し,まず多角化の有無や事業次に事業間の相互作用に注目して,全社の経営成果が低下してしまうメカニズムの解明に取り組んだ.本研究活動を通じて以下の点が明らかとなった.企業の持続的成長と収益性の安定を目指して行う多角化戦略は,既存事業の人件費や基礎研究費などの間接費を高止まりさせるため,国内外の新興企業と比較して高コスト体質につながりやすい.他方,多角化による新規事業の成長は既存事業の企業内における相対的地位を低下させてしまうため,既存事業に対する資源配分プロセスが変化し,既存事業に積極的な投資が行われなくなってしまう場合がある.このような中で既存事業の市場が一度衰退し再成長局面に入るような場合,不況期に低コスト体質で経験を積んだ国内外の新興企業が急速に成長するため,多角化企業の既存事業の競争力は低下してしまい,それによって多角化企業全体の収益性が伸び悩む場合がありうるということである.さらに本研究を通じて,日本企業のガバナンスについて以下のような含意を見い出すことができる.具体的には,日本企業では雇用の保障が重視されているため,多角化企業の既存事業部門は不採算にもかかわらず存続される可能性が高く,後になって企業全体の収益を損なう場合が多い.そのため,成長期の時点での将来の方向性を事前にある程度決めておくことが重要になってくる.なお、この調査結果は英訳され,現在英語論文雑誌で査読中である.
|