2016 Fiscal Year Research-status Report
効率性の神話的効果に関する研究:切削加工を介した中小企業の戦略的提携事例を通じて
Project/Area Number |
26780234
|
Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
上西 聡子 (ホームズ聡子) 九州産業大学, 経営学部, 准教授 (70632842)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 新制度派組織論 / 計算装置 / デザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、新制度派組織論によって「合理化された神話」と捉えられた効率性概念に対する理論的深耕を通じて、効率性を追求する企業間で形成される戦略的な提携関係の動態的なプロセスを探求することにある。この目的のもと、平成28年度は研究計画に沿って昨年度に引き続き、理論的研究と経験的研究を進めた。 具体的には、理論的研究では、効率性概念それ自体ではなく、効率性が実際の現場ではどのように理解され用いられているかを検討するために、新制度派組織論に加えて、経済学や社会学における議論をレビューした。経済学的な議論では、理論モデルとしての市場から効率性を検討してきたのに対して、社会学的な議論(とくにアクターネットワーク理論)では実際に存在する市場(いちば)においていかに効率性が計算されるかに注目し、計算の装置としての道具やルールの存在を検討していた。これら理論的研究の成果は、紀要および学位論文(博士論文)として公刊した。また、経験的研究では、昨年度に行ったパイロット調査をもとに、株式会社山本金属製作所およびその取引先企業に対してインタビュー調査を行った。製造業において二次サプライヤーでもある山本金属製作所が、様々な企業との取引を通して、いかに効率性を計算するのか、計算するための装置としてどのような道具やルールをデザインし、それによって企業間取引がどのように変化してきたのかなど、計算装置としての道具やルールに注目しながら企業間取引の変遷を分析した。これら経験的研究の成果は、理論的検討と合わせて紀要および学位論文(博士論文)として公刊した。 このように本年度は、効率性に対する理論的検討を深耕し、効率性を計算する装置に分析起点を置き、組織研究で扱われてきた企業間取引の変遷を検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、昨年度に引き続き理論的研究を行いつつ、経験的研究に重点を置いて進めることにあった。この点に関して、研究実績の概要にも示したように、昨年度に行ったパイロット調査をもとに複数の企業に対する調査を行い、理論的検討から抽出した計算装置という分析起点から検討した。その成果も紀要および博士論文として公刊していることから、進捗状況はおおむね順調に進展しているとした。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は最終年度であり、研究成果の発信に重点を置いていく。これは交付申請書に記載した通り、具体的には、第一段階として、平成26年度には先行研究の整理をもとに、独自の理論枠組みを構築し、学会発表を通じて研鑽した。第二段階として、平成27年度および平成28年度にかけて、理論的研究と同時に調査研究を積極的に遂行し、本研究で構築した理論枠組みに基づいた分析を行った。本年度は第三段階として、第二段階で行った独自の理論枠組みと調査・分析の結果を取りまとめ、学術雑誌への投稿や学会での発表を通じて成果の発信に努める。同時に、調査対象先に対するフィードバックを行うことで学術的な成果の算出のみならず、調査サイトの関わりもより綿密にしていく。それを通して、積極的に調査サイトを探索し、新たな調査研究の可能性が開き、研究内容を充実させていきたい。
|
Causes of Carryover |
平成28年度には企業調査を複数回行ったが、その際の旅費に予定と差額が生じたため、未使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
このため、未使用額は引き続き行う企業調査の経費に充てることにしたい。
|
Research Products
(2 results)