2015 Fiscal Year Research-status Report
多国籍企業における市場導入の地理的範囲を考慮した製品ブランド編成の比較研究
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26780243
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
井上 真里 日本大学, 商学部, 准教授 (60409480)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 製品ブランド / グローバル・ブランド / リージョナル・ブランド / ローカル・ブランド / 各国市場での売上高 / 市場導入のスピード |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は, 多国籍企業において製品ブランドが市場導入の地理的範囲により3つの類型(グローバル・ブランド, リージョナル・ブランド, ローカル・ブランド)に区分される現象, および当該企業が製品ブランド類型間での一貫性(consistency)やバランスを考慮する現象について, その諸要因をインタビュー調査に基づき明らかにすることである。 製品ブランド管理(product brand management)研究は1990年代初頭から勃興し, その初期には「ある製品ブランドに対して消費者が抱くイメージの形成原理解明」や「当該研究の方法論探求」といった基礎的な課題に焦点が当てられた。そして2000年代以降は, 製品ブランドの中でも「グローバル・ブランド(global brand)」の管理問題が大きく注目されるようになった。グローバル・ブランドとは,主要先進諸国を中心として世界的に市場導入され,海外売上高比率が高く,さまざまな利害関係者によって肯定的に評価された製品・サービスの名称であり, 製品ブランドはある1ヵ国のみで市場導入されるローカル・ブランド(local brand),ある地理的地域で市場導入されるリージョナル・ブランド(regional brand),そしてグローバル・ブランドに類型化される。 多くの製品ブランドを有する多国籍企業において,ローカル・ブランドやリージョナル・ブランドのほうがグローバル・ブランドよりも圧倒的に数が多いものの, 世界連結売上高に対する貢献ではグローバル・ブランドのほうが他の製品ブランド類型よりもはるかに高い傾向にある。そのためグローバル・ブランドのみに目を奪われがちであるが, より重要なことは各製品ブランド類型での数の多寡や売上高への貢献のみならず,それぞれの多国籍企業全体の戦略に沿った一貫性やバランスに着目することであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は,ある国のローカル・ブランドをリージョナル・ブランド化あるいはグローバル・ブランド化させるべく活動している企業について,国内企業(製造企業2社、小売企業1社)と海外企業(総合商社1社,コンサルティングファーム1社)にインタビュー調査を行った。 国内企業について共通していえるのは,グローバル・ブランドを前面に押し出して海外市場で展開しようとしても,主要な欧米多国籍企業とは異なり,現地での流通支配力がともなわないということである。将来的にはグローバル・ブランド中心の展開があり得るとしても,現時点では各国でローカル・ブランドを構築し、それを橋頭堡とするのが望ましい。 また海外企業については,フィリピンで韓国企業にインタビュー調査を行ったが,当該企業はかなり以前からフィリピン市場のさまざまなセグメントに浸透しており,それを梃子として韓国のグローバル・ブランドを横展開しても成果を得ているという。このことから,各国市場における製品ブランドの導入スピードが早ければ早いほど,ローカル・ブランドのみならず他の製品ブランド類型もバランスよく展開する余地が生まれる可能性があるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
教育および校務との兼ね合いで,欧米多国籍企業の親会社に現地でインタビュー調査を行うことがいまだ実現していないため,平成28年度はそれを主目的とする予定である。また,開発途上国市場についても,時間が許す限りフィリピンのみならず他国市場の動向を把握することに努める。 さらに国内については,近年,日本でのローカル・ブランドからグローバル・ブランドになりつつある日本酒に着目し,海外展開に積極的ないくつかの酒造から現状を伺うことによって当該研究への一助を得たい。
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Causes of Carryover |
平成27年度に計画していたインタビュー調査を行うことができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度のインタビュー調査にかかる旅費出張費に充当する。
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