2015 Fiscal Year Research-status Report
他選択肢が文脈要因として消費者の意思決定に与える影響の神経科学的解明
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26780244
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
諸上 茂光 法政大学, 社会学部, 准教授 (60422200)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 文脈効果 / 感情 / 体験 / 記憶・想起 |
Outline of Annual Research Achievements |
消費者の意思決定過程における,文脈の効果を検証するため,先行研究レビューの結果から,まずは文脈効果自体のモデル化を行い,心理実験を用いて検証することにした.具体的には,近年実務的にも注目されている物語広告の手法に着目し,広告内に用いられている物語が感情を通して広告や広告対象物に与える心理過程についていくつかの仮説を構築した.先行研究から,感情の持つ文脈的効果については意思決定過程に与える影響が比較的に大きいと考えられたため,感情を喚起しやすいノスタルジー広告を題材とし,ノスタルジーを喚起させるエピソードに伴う肯定的感情あるいは否定的感情が,広告などの情報入力によって想起され,それがどのような心理過程を経て広告や対象物に対する評価や態度に影響するのかについてモデルを作成した. 以上のモデルの妥当性を検証するため,実際に仮想的なラジオ広告を作成し,心理実験を行った.まず第一段階目として,感情価とその強度が,エピソード想起時に対象者に与える影響を測定するため,快感情・不快感情を想起するエピソードを用意し,これを異なる話法によって感情移入度を調整しながら実験対象者に聞かせ,エピソード・広告・サービス・企業に対する心理評価の測定を行った.この結果を分析したところ,快感情だけでなく不快感情を想起させる場合においてもエピソードの内容次第で肯定的な文脈効果を得られる可能性が示唆され,仮説モデルを修正した.さらに,第二段階目の検証として,不快感情想起エピソードの内容をトラウマエピソードと自己形成エピソードに細分化した場合の効果の違いについてさらに検証した. 以上の検証結果から,広告内の要素(特に本研究では物語要素)を文脈として使用した場合の消費者の意思決定に与える心理的影響について,一定程度説明できるモデルを構築できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった「他の選択肢」を文脈として使用するところまでは達成されていないが,現在進めている研究によって,少なくとも文脈(特に感情を伴うもの)が消費者の評価や意思決定過程にどのように影響するのか,概念だけでなくモデルとしてある程度説明できるようになったと考えられる.またそのモデルの妥当性について,当初の計画通り心理実験によって検証することができている.現在,その成果は査読論文誌に投稿中であり,概ね当初の計画通りに進んでいると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
申請当初予定していた他の選択肢と文脈の関係についてはまだ先行研究も少なく,仮説を体系的に構築し,モデル化するところまでは至っていない.そこで,当初計画とは異なるが,いくつかのシンプルな条件下でまずは小規模な心理実験を重ね,モデルに組み込むべき変数の設定を進めていきたい.また,認知科学の知見や,地域デザインの知見で多く見られるようになった文脈効果について,レビューを行うことで本研究計画では精緻化が不十分だった点についても洗い出したい.
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Causes of Carryover |
心理実験に掛る費用(謝金・人件費)を本年度は当初よりも抑制できたため,次年度に使用することとした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定よりも心理実験を多く行うことを計画しており,これに関わる経費およびデータ整理等に関わる経費として使用したい.
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Research Products
(1 results)