2014 Fiscal Year Research-status Report
非上場株式の公正価値会計における理論と実務の比較分析
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26780254
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Research Institution | Ryutsu Keizai University |
Principal Investigator |
岡本 紀明 流通経済大学, 経済学部, 教授 (00433566)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 公正価値会計 / 非上場株式 / IFRS第9号 / ファイナンシャリゼーション |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、まず非上場株式の評価に関する関連文献を精読するとともに、IFRS財団スタッフが公表した教育マテリアルを仔細に分析した。その結果、非上場株式に対して提示されている評価手法が非常に多様であり、評価者の主観性や見積もり及び理論モデルにおける仮定や選択等の問題が存在する点を明らかにした。また、各種文献等において明らかになっているわが国のIFRS任意適用企業の実務状況を分析した。その結果として、想定どおり複数の評価手法を併用する企業が多いことが明らかになった。 さらに、社会学等における学際的文献を渉猟し、非上場株式にまで及ぶ公正価値会計の拡大を説明する理論的枠組みとしてファイナンシャリゼーションの概念を見出し、関連する先行研究のレビューを行い、公正価値会計拡大の理論的説明を試みた。 上記の研究成果は研究論文(和文)として公表されるとともに、さらに修正を加えたバージョンが、査読を経て2つの国際学会(ヨーロッパ会計学会第38回大会:グラスゴー、第30回学際的会計研究学会:ストックホルム)で報告(英文)することを認められている。 以上に加えて、現在、日本基準を採用している東証一部上場企業が提出した有価証券報告書において開示されている、評価が困難な非上場株式の額に関するデータを収集している。ほぼデータの収集が終わりつつあるが、現段階において、割合的にも非常に多くの企業が非上場株式を保有していることが判明している。これについては今後さらに分析を進め、非上場株式の公正価値評価をさらに推し進めようとする国際財務報告基準(IFRS)第9号導入のインパクトとして、研究成果に結びつけることにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の方向性が完全に想定していた通りにはなっていないが、現時点における論文や学会報告などの成果に鑑みれば、研究の達成度としては十分評価できるものと思われる。当初は特に税務における非上場株式の実務と財務会計上の公正価値会計の接点を見出すことにも注力しようと考えていたが、現段階で密接な関連性の確証が得られていないため、平成27年度においてある程度検討することを予定している。加えて、IFRS適用の進展などにより、非上場株式の公正価値会計のさらなる導入が進んだ場合、現在日本基準を採用して取得原価で据え置いている非上場株式の公正価値評価がどの程度のインパクトをもたらすか、企業の有価証券報告書に基づきデータ収集をしており、ほぼデータ集計が終わりつつある。次年度では当該データのさらなる分析を行い、研究成果を取り纏めたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は非上場株式の公正価値会計の実務実践をより具体的かつ個別に考察すべく、評価の事例研究等を駆使して研究を進展させたいと考えている。加えて、平成26年度には達成し得なかった非上場株式の税務における状況との関連を検討していきたいと考えている。さらには、最終年度として研究成果を取り纏めにより一層力を注ぐとともに、各種国内外の学会や研究会において研究成果の発表を積極的に行っていく予定である。また、海外のトップジャーナルへの投稿や英文による研究成果のさらなる取り纏めも進めていく。
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Research Products
(4 results)