2014 Fiscal Year Research-status Report
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26780258
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
前田 陽 明治大学, 商学部, 准教授 (30451454)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 原価管理 / 設備投資計画 / 経営システムのパッケージ / 品質管理 / 原価低減 / 購買管理 / 中期経営計画 / マネジメント・コントロール |
Outline of Annual Research Achievements |
管理会計研究において、原価企画と設備投資管理の関係を解明した研究は少ない。本研究は製品原価に関して持続的な競争優位性を保持するには、いかにして利益・原価を作り込む原価企画と設備投資管理とを効果的に結び付ければよいかを解明することを「研究の目的」に実施している。研究を遂行した結果、平成26年度は2本の論稿を執筆した。 まず「トヨタ自動車における購買管理システムと原価管理-1930年代から1960年代までの期間に着目して-」(『明大商学論叢』第97巻第1号、2014年12月)では、トヨタの事例を通じ、サプライヤーとバイヤーとの関係性の進化を完成車メーカーの購買管理システムの史的変遷という観点から論じた。これにより同社では良質な買入部品をより低価格で入手すべく、部品サプライヤーを積極的に育成する購買管理システムを整備してきたことを解明した。 また「管理会計におけるコントロール理論と設備投資計画」(『明大商学論叢』第97巻第2号、2015年2月)では、管理会計におけるコントロール理論に基づき設備投資計画に対する適切なコントロールの可能性について考察した。先行研究では設備投資のコントロールや監査が蔑ろにされるのは運用面での要因が原因とされてきたが、本稿では理論的にコントロールシステム単独で設備投資計画のコントロールは難しく、一連の経営システムのパッケージとしてコントロールを行う必要があると示した。 「研究実施計画」では、平成26年度は実務における原価企画や設備投資管理の実態を解明すると言及している。以上2件の論稿のうち、前者を通じて原価企画の重要な一部分である購買管理システムの実態を解明することができたと考えられる。また後者により設備投資管理は経営システム全体が首尾一貫して構築されるべきとの論が導かれ、次年度以降の研究の問題設定の検討に役立つものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を簡潔に表せば、「設備投資管理の実態を明らかにすること」および「原価企画と設備投資管理を結合させる組織コンテクストを理論的に解明すること」の2点である。平成26年度の研究を通じて、コントロールシステム単独で設備投資計画をコントロールすることは難しく、コントロールをするならば一連の経営システムのパッケージを構築する必要があると示すことができた。その結果、原価企画と設備投資管理を結合させる組織コンテクストの解明には、一連の経営システムの検討が必要と判明した。 原価企画も設備投資管理も単年度で行われるものではなく、中長期的な視座を持ちながら行われるものである。そこで、どのような文脈の中で設備投資が管理されるのか理解すべく、その大まかな体系である中期経営計画についても研究を行った。これについては「イトーヨーカ堂における中期経営計画の策定」(2014年9月20日・日本原価計算研究学会全国大会)として研究報告を行っている。この研究により、中期経営計画の策定プロセスにおいては組織文化が極めて重要な要素であることが判明した。 以上の研究を通じて「原価企画と設備投資管理を結合させる組織コンテクストを理論的に解明すること」という目的を遂行するに必要な条件を示すことができた。平成26年度の研究により、本研究課題の完遂に一歩近付いたという意味で「順調に進展している」との評価を下すことができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究で設備投資計画を包含する中期経営計画がいかにして組織文化を創出させることを示した、しかし、これがどのようなプロセスによるかは判然としない。従い、平成27年度においてもヒアリング調査及び文献調査を通じて、設備投資計画を包含する中期経営計画の実態を探る。その上で本研究の中心課題である原価企画と設備投資管理との結合についても解明する予定である。 そして平成27年度は設備投資管理の実態を明らかにすべく、実務家等に対して複数回のヒアリング調査を行う予定である。また、文献調査は幅広く理論書や実務家が執筆した著作を入手し、その分析を行なう。そうした幅広い文献を得て、ヒアリング調査では得られなかった情報の隙間を埋めていく。 平成27年度の研究成果の一部は日本会計研究学会第74回大会において研究報告という形で明らかにする予定である。さらに研究途上であっても、その時点までの研究成果を論稿の形で発信していく。
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Causes of Carryover |
平成26年度は愛知県へのヒアリング調査を数回行う予定であったが、ヒアリング先への折衝が難しく、国内出張のための旅費がなかった。そのため助成金が余ることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は東京でのヒアリングを主として行う予定でおり、その謝金は計画書通りに支出する予定である。また海外学会への参加を検討しており、交付申請段階における使用計画に基づいた支出が可能と考えられる。
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