2015 Fiscal Year Research-status Report
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26780258
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
前田 陽 明治大学, 商学部, 教授 (30451454)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中期経営計画 / 組織文化 / 改善活動 / 仮説検証 / 設備投資計画 / 原価企画 / 業務改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
管理会計研究において、原価企画と設備投資管理の関係を解明した研究は少ない。本研究は製品原価に関して持続的な競争優位性を保持するには、いかにして利益・原価を作り込む原価企画と設備投資管理とを効果的に結び付ければよいかを解明することを「研究の目的」に実施している。 設備投資計画は一般に中期経営計画など、企業における経営戦略に基づいて策定される。一方、原価企画は製品計画を実現するために行われるものである。製品計画も中期経営計画を実現する個別計画として成り立っている。設備投資計画と原価企画との関係を見る場合、中期経営計画にも目を向ける必要があると考えられる。そこで、平成27年度は中期経営計画の実態を解明しようと「イトーヨーカ堂における中期経営計画の策定プロセス」(廣本敏郎・挽文子編『日本の管理会計研究』中央経済社、2015年8月、pp. 78-101)を執筆した。論稿執筆に当たり、中期経営計画を熟知し、かつその策定システムを立ち上げた経験を有する実務家にヒアリングを行った。この研究を通じて、中期経営計画策定のプロセスは組織文化と密接な関係にあることが判明した。特に場面情報観という組織文化(思考様式)がある企業では、仮説検証に基づく現場活動が促され、それが策定される中期経営計画の中身に反映されることが明らかになった。 「研究実施計画」では、平成27年度以降は設備投資管理が原価企画といかに関係しているかを解明すると言及している。上記の論稿を通じて、設備投資計画と原価企画を結ぶ中期経営計画の実態を解明することができたと考えられる。ただ中期経営計画を媒介とし、いかに設備投資管理と原価企画が結びつくかについては、次年度以降、さらに研究を進める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、「設備投資管理の実態を明らかにすること」および「原価企画と設備投資管理を結合させる組織コンテクストを理論的に解明すること」の2点である。平成27年度の研究を通じて、設備投資計画と原価企画とを包含する中期経営計画がいかなるプロセスで策定されるのかを解明した。この研究により、中期経営計画の策定プロセスにおいては組織文化が極めて重要な要素であることが判明した。特に、場面情報観という組織文化(思考様式)に基づいて設計された場合、現場における仮説検証という思考・行動様式を促進するものとなっていることが明らかになった。 また、中期経営計画の下でいかに現場における改善活動が促進されるかについても探究を行った。これを「中期経営計画と改善活動-イトーヨーカ堂の事例を通じて-」(2015年9月8日・日本会計研究学会全国大会(神戸大学))として、研究報告を行った。この研究の結果、イトーヨーカ堂において「業務改革」と呼ばれる現場の改善活動が行われるようになると、中期経営計画の策定プロセスが変化したことを明らかにした。すなわち策定される中期経営計画のうち,営業活動に関わる部分は業務改革で討議された内容が盛り込まれ,比較的短期的な目前の課題解決志向になったこと。一方,投資活動に関わる部分は投資計画として中長期的志向で立案されるようになったことを示した。 以上の研究を通じて「原価企画と設備投資管理を結合させる組織コンテクストを理論的に解明すること」という目的を遂行するに必要な条件を示すことができた。平成27年度の研究により、本研究課題の完遂にさらに近付くことができたという意味で「順調に進展している」との評価を下すことができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度までの研究で設備投資計画を包含する中期経営計画が、現場の改善活動に影響を及ぼすのみならず、現場の改善活動も策定される中期経営計画の内容及びその在り方に影響を及ぼすことが分かった。そして、そこには組織文化が大きな要素として介在することが分かった。ただ、まだ設備投資計画と原価企画などの現場における活動が直接的にどのように結びついているか解明しきれていない。そのため、平成28年度においてもヒアリング調査及び文献調査を通じて、本研究の中心課題である原価企画と設備投資管理との結合についても解明する予定である。 平成28年度は設備投資管理の実態を明らかにすべく、実務家等に対して複数回のヒアリング調査を行う予定である。また、文献調査は幅広く理論書や実務家が執筆した著作を入手し、その分析を行なう。そうした幅広い文献を得て、ヒアリング調査では得られなかった情報の隙間を埋めていく。 研究成果の一部は学会報告という形で明らかにする予定である。さらに研究途上であっても、その時点までの研究成果を論稿の形で発信していく。
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Causes of Carryover |
平成26年度に生じた繰越額が大きかったため、平成27年度における研究活動はほぼ順調に進めることができたものの、若干助成金が余ることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度もヒアリング調査を継続的に行う予定である。また謝金も計画書通りに支出する予定である。よって交付申請段階における使用計画に基づいた支出が可能と考えられる。
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Research Products
(2 results)