2016 Fiscal Year Research-status Report
非正規滞在者の社会統合を目指す歴史比較社会学的研究
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26780272
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
朴 沙羅 神戸大学, 国際文化学研究科, 講師 (40726973)
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Project Period (FY) |
2015-03-01 – 2019-03-31
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Keywords | 非正規滞在 / オーラルヒストリー / ナショナリズム / レイシズム |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度はオーラルヒストリーに関する専門書(『オーラルヒストリーとは何か』水声社)を翻訳し、社会調査に関する教科書(『最強の社会調査入門』ナカニシヤ出版)を執筆・編集した。また海外ジャーナルに論文が2本("Casting migration seeds under colonial rule: migration from Korea to Japan after the Second World War", Journal of Oral History Society ,vol. 44(1),pp.57-66)(Inventing aliens: immigration control, ‘xenophobia’ and racism in Japan", Race and Class, Vol.58(3), pp.64–80)掲載された。国内の学術ジャーナルにおいては投稿論文が1本(「越境者の輪:占領期北東アジアの「密航」「密貿易」を支えたネットワーク」『理論と動態』第9号, pp.20-36)、書評論文が1本(伊地知紀子著『消されたマッコリ。:朝鮮・家醸酒文化を今に受け継ぐ』『ソシオロジ』第61号2巻, pp.113-121)掲載された。また口頭報告としては、日本社会学会にて1回、それ以外に社会調査協会、日本オーラル・ヒストリー学会で、それぞれ1回ずつ公開研究会・シンポジウムの登壇者として招かれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は引き続き、日本国内で非正規滞在者に対する調査を行おうと努めたが、コンタクトを取ること自体が非常に困難だった。そのため、調査対象及び方法を若干変更せざるを得なくなった。すなわち、日本国内においては非正規滞在者ではなく重国籍者に対象を変更し、彼ら・彼女らが日常的にどのようなトラブルを経験し、それに対処しているのか、そこにおいて日本の入国管理政策はどのような影響を与えているのかをインタビューすることにした。また、非正規滞在者については、文書で調査可能な対象・時期に調査範囲を限定し、「日本における入国管理政策は他国と比較して裁量権が大きいのか」「それはどのような歴史的経緯によるものか」という問いを設定した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は上記の問いに基づき、日本国内における重国籍者と、戦後日本における入国管理体制の成立に関する国際比較という点に調査の対象を絞っていく。重国籍者へのインタビューについては、すでに国際結婚を経験した日本人によるNPOに参加し、自身が重国籍者である人々及び国際結婚した人々のパスポート取得・更新にまつわるトラブルとその解決方法、婚姻・子の出生時における国籍取得に関してインタビューを行う。また入国管理体制の国際比較については、立命館大学・国会図書館・合衆国フーヴァー研究所に所蔵されている占領軍文書を利用し、日本における入国管理体制の成立においてどのような交渉が日本政府と占領軍との間で行われたのか、それは他の敗戦国(特にドイツ)と比較した際にどのような特徴があるかという点について精査する。
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Causes of Carryover |
3月にアメリカ合衆国にて文書調査を行う予定だったが、その調査を所属研究科の拠点形成事業に関する調査として行うこととなり、科学研究費(若手B)を使用することができなかったため。 しかし、もし科学研究費が調査・学会報告時における託児費用に使用することができたのであれば、このような次年度使用額は決して生じなかったものと思われる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は海外ジャーナルへの投稿論文を複数抱えているため、英文校正費用として使用する。ただし、出産を今年度8月に控えているため、研究中断を申請する。したがって、産後2年間に韓国・フランス・ドイツでの文書調査・インタビュー調査を行うことによって、未使用額を有効に活用した調査研究を行っていく。
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Research Products
(10 results)