2015 Fiscal Year Research-status Report
大規模都市再開発期における社会周縁層の空間的滞留と社会的排除に関する国際比較研究
Project/Area Number |
26780286
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
田中 研之輔 法政大学, キャリアデザイン学部, 准教授 (30513204)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 都市周縁層 / 空間的隔離 / 社会的排除 / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現代都市再開発期における社会周縁層の空間的滞留と社会的排除との<社会-空間の動態的連関>を国際比較分析によって明らかにすることを目的とする。分析対象である社会周縁層について、本研究では、①国内都市部の非正規雇用ならびに失業者へのインテンシブなフィールドワーク調査、②米国非正規滞在移民への現地労働追跡調査、③社会周縁層の比較分析を実施してきた。本研究では、13年間にわたり継続的に行ってきた『都市周縁層の国際比較社会学』の成果をまとめる集大成となる。 具体的には第一に、現代都市再開発期に顕著案な空間的隔離の今日的手法である「ジェントリフィケーション」・「ゲイティッド・コミュニティ」の余波で都市の周縁へと追いやられ「単身低賃仮宿、路上生活」をする者たちの<社会層>の生活世界の分析を行った。第二に、都市周縁層の社会的排除に関する社会-政策過程分析を展開した。 まとめると、現代都市再開発期における社会周縁層の空間的滞留と、社会的排除の施策を強化する社会動向について、フィールドデータと最新の理論的視座とを対話させ、国際比較の視点を導入して緻密な社会学的実証分析を展開していく。本研究は、ピエール・ブルデューが警鐘を鳴らしている新自由主義国家がもたらす「生活の破壊」の内在的分析かつ国際比較分析の流れをうけている。 分析手順として、1)社会政策過程分析――新自由主義国家の社会福祉政策と刑罰政策、2)都市空間分析―「ジェントリフィケーション」「ゲイティッド・コミュニティ」、3)労働・生活世界分析―リフレクシブ・フィールドワークを段階的に進めてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では、現代都市再開発期における社会周縁層の空間的滞留と社会的排除に関する国際比較研究を進めていくために、1)社会政策過程分析――新自由主義国家の社会福祉政策と空間隔離の施策(平成26年度重点課題)、2)都市空間分析―「ジェントリフィケーション」「ゲイティッド・コミュニティ」(平成26年度と平成27年度の継続重点課題)、3)労働・生活世界分析―リフレクシブ・フィールドワーク(平成26年度~平成28年度以降の継続調査)の三つの分析を段階的に進めていくことを予定していた。①政策過程と国家論に関する国家・社会政策分析、②(都市)社会-空間分析、③都市周縁層の労働生活世界を抽出する質的調査メソッド(本研究では、リフレクシブ・フィールドワーク)を相互に連関させるなかで総合的な分析を行っていく。 計画より、分析から執筆にかけてのアウトプットのプロセスに時間を要している。だが、国内外での調査は計画的に実施できており、おおむね順調な進捗であるといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、①国家・社会政策分析に関して、新自由主義体制下の社会周縁層への諸施策の分析を加えていく。新自由主義経済体制下での刑罰国家論は、現段階の到達点として、第一に、一方で、デヴィッド・ハーヴェイの新自由主義国家論が、刑罰国家形成の歴史的過程ならびに刑罰国家の現況を看過していること、他方で、ジョック・ヤングが排除型社会の到来を近代から後期近代への社会的移行として論じていることによる新自由主義への政策的転換の視点の欠如、を問題視している。さらに第二に、新自由主義国家の政策展開により、「貧者を調整・統制すること」から「貧者を処罰すること」へと国家が刑罰化転回を遂げていくこと、それは歴史的にみると、「社会福祉-ワークフェア-刑罰励行」への劇的な移行にあることを警鐘している。これらを踏まえて、本研究では、国際比較研究に取り組む。次に、③都市周縁層の労働・生活世界の分析については、今後も計画的に国内外での定点現地調査を継続し、本研究成果を出版していく。
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Research Products
(7 results)