2014 Fiscal Year Research-status Report
国際移住労働とウェルビーイング:インドネシア人介護福祉士とその家族への影響
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26780302
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
佐々木 綾子 千葉大学, 普遍教育センター, 特任講師 (20720030)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 外国人介護士 / ウェルビーイング / 国際移住労働 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、EPAによる介護士受入れ制度により来日するインドネシア人等、「再生産領域」での国際移住労働を経験したインドネシア人とその家族を対象に、日本とインドネシアを研究フィールドとして実施するものである。日本とインドネシア両国において文献研究、資料分析のほか、アンケート調査と聴き取り調査を行うが、インドネシアにおいては、インドネシア在住のインドネシア語を母語とする研究者の全面的な協力を得て実施する。目的は、日本で介護の仕事に携わることが、1.本人、2.本人の家族、3.母国社会の「ウェルビーイング」(個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあること)にどのように関係するのかを体系的に分析し、EPAの受入れ制度を通した国際移住労働が、移動する本人と家族、母国社会のウェルビーイングの向上にどう貢献するのか明らかにすることである。 今年度は、現在、東日本に居住しているインドネシア人介護福祉士候補生及び介護福祉士の資格取得後、既に就労を行う人々へのアンケート調査(QOL26調査票のインドネシア語版)と聴き取り調査を実施した。東日本において過去3年間で介護福祉士資格取得者を出している34施設のうち、調査への協力を承諾した17施設48人の介護福祉士および候補生に調査票を送り、同意を得た2名にインタビューを行うことができた。 この調査の過程で、既に帰国や退職を経験している施設は3割にのぼり、その主な理由が結婚・出産であったことから、女性のEPA介護士が、特に配偶者が外国人である場合に就労資格を認めない状態のまま介護領域で働き続けることの困難性と、「日本で働き続けたい」という希望を持ち、ウェルビーイングの状態が良好であるにも関わらず、多くの介護福祉士およびその候補生にとってキャリアパスを描きにくい構造的な要因があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アンケート調査やインタビュー調査は施設を通して実施しているが、思った以上に施設からの同意を得ることが難しく、また、同意を得て施設にアンケートを送付しても、そのの回収率が低い状況にある。また、全国で外国人介護士の受け入れを行っている施設へのアクセスの問題、研究時間の確保の問題、当事者のスケジュールの問題から、当初予定していた研究方法では成果を出すことが難しい状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
日本における調査、特にアンケート調査票の送付については、西日本の施設に対して同様に行うが、インタビュー調査については個人ではなくグループインタビューとして実施する方向で考えている。 また、インドネシア人家族への調査に関しては、これまでに同意がまったく取れない状況のため、計画を変更し、資格取得の有無にかかわらず帰国した介護福祉士についての調査を実施し、日本国内にとどまる者との比較調査をすることを検討中である。
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Causes of Carryover |
インタビュー調査の同意を得ることができず、旅費の支出が少なかったこと、インドネシア人研究者の研究体制および実施スケジュールの変更により、人件費・謝金の支出が少なかったことが最大の理由としてあげられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は9月にインドネシア調査を予定しており、また、インドネシア側の研究体制も落ち着いたことから、旅費および人件費・謝金の支出が見込まれる。
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Research Products
(1 results)