2014 Fiscal Year Research-status Report
介護倫理からみたスピーチロック廃止へのガイドライン作成に向けた研究
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26780334
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Research Institution | Kyushu University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
清水 径子 九州保健福祉大学, 社会福祉学部, 助教 (90582461)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スピーチロック / 言葉による抑制 / 身体拘束 / 介護倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究実績としては,スピーチロック(言葉による抑制)の具体的内容を把握することとして,1.文献,先行研究からスピーチロックの具体的な項目やそれに対する影響,対応策等を明らかにすること,2.スピーチロックに対する施設での認識を調査すること,の2点に分けられる.各項目の具体的な内容は次の通りである. 1.「スピーチロック」の具体的な内容やそれに対する影響等について,「スピーチロック」,「身体拘束」の先行研究に加え,「介護倫理」や「高齢者虐待」,「老年心理学」等の関連領域の文献からも情報を得た.文献・先行研究より「待って,座って,どこに行くの」などの施設や病院などでスピーチロックとされる具体的な言葉を抽出した. 2.「スピーチロック」の認識について介護老人福祉施設の職員5000名を対象に質問紙調査を実施した.その結果,「スピーチロック」は身体拘束からの問題として捉えているのではなく,介護者の接遇や高齢者虐待,職員の態度等,非常に広範囲に関わる問題として認識されていることが示唆された.さらに「スピーチロック」を容易に引き起こしてしまう場面や,その時の職員の心理状態の一端が明らかとなった.これらの結果から,職員自身が専門職としての態度を考え,その状況やその場の感情だけで発言せず,利用者を理解すること等,広い視野を持ってケアを行っていく必要があることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年4月~6月に先行研究・文献等を精読し,施設等のスピーチロック(言葉による抑制)に関する具体的な取り組みや内容についてまとめることができた.その結果を基に5月~7月に質問紙作成及びプレ調査を実施した.8月~9月に介護老人福祉施設の職員5000名を対象に質問紙調査を実施した.ここでは,スピーチロックの「座っていて」という言葉が,どのような場面で言葉による抑制に該当するか,どのような場合に該当しないのかという認識状況について調査した.(スピーチロックの例文は,施設単位でのマニュアルや研究発表事例より抽出し,18の具体例を調査項目とした.)さらに,自由記述において施設内でスピーチロック(言葉による抑制)だと思われる言葉を使った,もしくは見聞きした場面を,対象者の行動・言動,ケア提供者のとった行動・言動,ケア提供者の心理状態,対象者の反応の4つに分けて明記し,言葉による抑制を使用しているとみなされる場面を調査した.9月~11月調査データ入力を行い,11月~調査内容の分析及びまとめたものを4月に日本認知症ケア学会へ論文投稿した.上記の通り,計画通りに調査が進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は,今年度の研究結果を踏まえ,スピーチロック廃止に向けた取り組みについての訪問調査を実施する.当初の計画通り,平成26年度の調査結果から調査協力が得られた「スピーチロック廃止に向けた取り組みをしている施設」を5施設訪問し,職員への半構造化インタビューを1人30~40分程度行う.加えて,スピーチロック廃止に向けた実践の発表をしている施設を2施設訪問し,同じ方法により調査を行う.内容は,主にスピーチロック廃止への取り組みの経緯,取り組みの方法,取り組みを行う場合の問題点,他の施設で取り組む場合の留意事項等を中心にインタビューを行う. 28年度以降は,スピーチロック廃止についての研修会及び事例検討を施設で行い,調査結果を基に研修会を開き,施設でのスピーチロックを減らしていくための改善方法を模索する.また,介護倫理からみたスピーチロック廃止に向けたガイドラインを作成する準備を進めていく予定である.
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Causes of Carryover |
平成26年度の助成金使用については,質問紙調査の郵送料が予定額よりも安価になったこと,質問紙の返送が見込み数よりやや少なく,返送用の郵送料及び入力の人件費が抑えられたことにより,使用額に残高が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
詳細な使用計画は以下の通りである. 今年度の使用計画としては,訪問調査・大会参加に係る費用が主となる.消耗品:訪問調査に関わる用紙,封筒などの消耗品の購入を行う.旅費:学会大会への参加・訪問調査に関わる交通費,宿泊費など必要な旅費を支出する.その他:訪問調査に使用するボイスレコーダー,施設との連絡用の切手代,研究成果発表のための投稿料などを予定する.また,調査後の逐語録作成のための人件費の計上も予定する.
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