2015 Fiscal Year Research-status Report
支援ニーズをめぐって息子介護者と支援者の認識が一致/乖離する条件の探索
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26780336
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
平山 亮 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (10728075)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 息子介護 / ジェンダー / 家族 / ケア専門職 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度までに得られたインタビュー・データを分析し、その結果を学会等で報告することを中心に行った。その目的は、集めたデータの質やその解釈のしかたについて、当該領域の他の研究者・専門家からのフィードバックを受け、それをもとにこれまでの研究の進め方について振り返り、最終年度である翌年度の課題を整理するとともに、研究全体の総括に向け、準備を行うためである。 本研究の目的は、親を介護する男性(息子介護者)と高齢者ケアの専門職それぞれが、介護状況に対してどのような認識を抱いているか、また、そのような認識はケア・家族・ジェンダーなどに関するどのような観念や志向を前提としているかを明らかにすることである。本年度は、息子介護者と専門職それぞれについて次のような知見を得られ、学会等で報告を行った。 息子介護者については、彼らが自身のケア能力をどのように説明しているのかについて分析を行った。その際、彼らの説明を成り立たせている男性とケア、あるいは男性のケアについての前提に着目した。彼らの説明を成り立たせている前提はさまざまだが、特に注目すべきなのは、彼らのなかにはステレオタイプ的なジェンダー観そのものを前提として自身および男性・息子一般の介護能力および介護状況を見ている者も少なくないことである。また、だからこそ彼らは自身の介護状況に楽観的になったり、支援の必要性を感じないでいたりする可能性があることも示唆された。 専門職については、高齢者のケアにおける家族とはどのようなものか(と専門職が捉えているか)に焦点を当てて分析を行った。インタビュー・データのなかで鍵となるアイディアは「その人らしいケア」である。「その人らしさ」について最もよく知っているのは家族である、という前提のもと、ケアの組み立てにおいて家族(息子を含む)の認識や意向が最優先されがちになる状況が浮き彫りになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データに関しては、必ずしも当初想定していた通りのものが利用可能になったわけではないが、息子介護者と専門職それぞれの介護状況の認識のしかた、およびその前提を明らかにするという研究目標に沿って分析を実施し、必要な知見が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
息子介護者および専門職による介護状況の認識については概ね順調に進んでいる一方、微視的な分析が中心であったため、息子を含めた子世代全体が置かれた社会経済的状況や、その世代の介護とジェンダーに関する志向など、文脈的背景が十分に捉えられていないのではないか、という懸念もある。そこで、翌年度にそれらの背景を把握するための追加データを収集する。それにより、これまでに得られたデータを、より文脈化して解釈することが可能となると考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は計画的に生じたものである。すなわち、これまでに収集したデータおよび分析の結果を精査し、研究目標の達成のためにデータを追加収集する必要性が示唆されたため、研究実施期間全体における予算の枠内でデータ収集が継続できるように、支出計画を見直したことによって生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究目標を十分に達成できるよう、データの追加して収集する計画である。
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