2017 Fiscal Year Annual Research Report
Social functionality of individualism and democratic decision-making
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26780343
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
竹村 幸祐 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (20595805)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 個人主義 / 集合知 / 文化 / 協力行動 / 不確実性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、従来の文化心理学が十分に扱いきれなかった「個人主義の社会的機能」の解明を目指した。それにあたり、個人主義的傾向が2種類の協力行動とどのような関係を持つかに焦点を当てた。ひとつが資源の共同分配への協力で、もうひとつが集団意思決定への協力であった。これらはいずれも、不確実性に対する集合的対処への協力行動である。前者は個人が獲得した資源を、後者は個人の情報・判断を、集団のレベルでプールすることで不確実性を低減させるものである。ただし、資源や情報のプールにより不確実性を低減させるには、集団メンバーが個人主義的傾向を持ち、相互に独立に判断・行動する必要があると考えられる。そのため、資源共有により不確実性低減を図る必要がある者(e.g., 漁業者)においては、協力行動と個人主義が正の相関関係を示しやすいと予測された。また、トップダウン型の意思決定を行う集団(e.g., 体育系の学生クラブ)に比べて、民主主義的に意思決定を行う集団(e.g., 文化系の学生クラブ)においては、集団意思決定への協力行動と個人主義が正の相関関係を示しやすいと予測された。平成29年度には、漁業者と非漁業者を比較するデータの分析(研究1)、また、文化系クラブと体育系クラブを比較するデータの分析(研究2)を行い、いずれも仮説を支持する結果を得た。 また、平成29年度には、コミュニティへの協力行動に対する流動性の影響を検討する実験を実施した。実験の結果、協力行動を規定する要因が流動性の高低で異なることが示された。コミュニティの流動性が高い時には、協力行動を促す社会規範の効果が弱くなった。一方で、流動性が高いコミュニティでは、コミュニティ内の他者の個人特性(人柄)が信頼できる時に協力行動が生じやすかった。これは、流動的コミュニティにおいては、「個人」に焦点のあたった社会秩序が形成されやすいことを示唆している。
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