2015 Fiscal Year Research-status Report
小学生における仲間との協同的な学習に対する動機づけの発達プロセスの研究
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26780358
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
岡田 涼 香川大学, 教育学部, 准教授 (70581817)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 協同的な学習 / 協同的な学習に対する動機づけ / 自己決定理論 / 小学生 / 心理的欲求 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、小学生を対象院、仲間との協同的な学習に対する動機づけを捉える概念を新たに提起し、その発達プロセスを明らかにすることを目的としている。そのために、(1)協同的な学習に対する動機づけを測定する尺度を作成する、(2)協同的な学習に対する動機づけの発達的変化を明らかにする、(3)心理的欲求の充足経験が協同的な学習に対する動機づけに及ぼす影響を明らかにする、という3つの目的のもとに研究を進めている。今年度は、主に(3)について検討した。昨年度から継続的に調査を行っている小学生児童約400名のデータをもとに、心理的欲求と協同的な学習に対する動機づけとの関連を検討した。半年の間隔を空けた2時点の短期縦断データをもとに、交差遅れ効果モデルによるパス解析を行った。その結果、心理的欲求の充足が動機づけの変化を予測する一方で、動機づけが心理的欲求の充足を予測するという双方向的な関連がみられた。この研究については、学内の紀要論文として発表した。また、(3)に関して、動機づけの発達プロセスを明らかにするために、調査対象学級での授業場面を観察し、そこでの協同の経験および教師の働きかけと動機づけとの関連を検討した。この研究については、学会発表を行った。次年度は、継続調査によって蓄積したデータをもとに、上記(1)~(3)をさらに詳細に検討する。(1)について、異なるコーホートを用いて尺度構造の交差妥当化を行う。(2)について複数の横断データと4年間の縦断データを組み合わせて、小学校段階における動機づけの発達的変化を多面的に分析する。(3)について、心理的欲求と動機づけとの関連について4年間のデータをもとに縦断的な関連性を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点において、概ね予定通りのペースで研究を実施している。初年度においては、協同的な学習に対する動機づけを測定する尺度を作成し、その妥当性と信頼性を検討した。また、研究実施以前から行っていた調査について、縦断データ収集のための基礎固めを行った。2年目には、初年度に引き続いて調査を実施し、縦断的なデータを収集した。また、研究目的に即して、協同的な学習に対する動機づけの変化を説明するための要因として心理的欲求との関連を検討し、短期縦断的な調査データから両者の関連を明らかにした。さらに、動機づけの発達的変化のプロセスを明らかにするために、協力校での授業観察を行い、次年度での調査内容の改善と充実を図った。一連の研究結果については、学術論文および学会発表のかたちで公表し、国内の研究者と議論を行うとともに、研究知見の普及に努めた。加えて、協力校に対して結果報告書および結果報告会のかたちで、フィードバックを行っており、その延長として3年目以降も研究協力について確約を得ている。したがって、来年度には4年間にわたる縦断データの収集が完了でき、そのデータをもとにした縦断的な分析を行う体制が整っていることになる。以上のことから、研究期間2年目においても、当初の予定と一致するかたちで研究を遂行できているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究の方向性として、上記の研究目的(1)~(3)を再度詳細に検討していく予定である。調査としては、現在の調査協力校において継続調査を行い、4年分の縦断データの収集を完成させる。このデータを用いて、初年次と2年次の知見を多面的に検討する。(1)について、異なるコーホートを用いて尺度構造の交差妥当化を行う。(2)について複数の横断データと4年間の縦断データを組み合わせて、小学校段階における動機づけの発達的変化を多面的に分析する。(3)について、心理的欲求と動機づけとの関連について4年間のデータをもとに縦断的な関連性を検討する。また、2年次における授業観察等から得られた示唆をもとに、継続調査とは別の調査を実施し、協同的な学習に対する動機づけの発達的変化のプロセスを説明し得る要因を探る。特に、教室場面における教師のはたらきかけの影響に注目し、調査データから動機づけとの関連を調べる。これらの研究を通して、小学生における仲間との協同的な学習に対する動機づけを捉える概念を確立させ、その発達プロセスを明らかにする。得られた研究知見については、複数の学会において発表を行うとともに、学術論文として投稿するための準備を進める。また、協力校に対しては継続して結果報告書の作成と報告会の実施を通して研究知見を還元し、教育実践に役立ててもらえるようにつとめる。
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Causes of Carryover |
次年度の使用額として、11928円が生じた。予算執行は研究の進行に合わせて当初の予定通りに行ったが、消耗品について昨年度から継続して使用可能なものがあったために、購入数が予定より少なかった。また、研究関連図書の購入において、予定よりも低額での購入が可能なものが複数あったため、図書購入に想定していた予算額との差額が生じた。これらの理由から、11928円の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予算との差額の11928円については、次年度の消耗品購入費の追加分にあてることを予定している。記録媒体や質問紙作成のための用紙を購入する。また、図書購入費にも一部あてることで、研究遂行および論文執筆のための文献を入手することに活用したい。
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